共同研究・競争的資金等の研究 - 井上 麻夕里
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沿岸浅海域の地理学研究:浅海底地形学の構築および海底景観の可視化と啓発
研究課題/領域番号:21H04379 2021年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
菅 浩伸, 後藤 和久, 藤田 和彦, 横山 祐典, 渡部 真史, 後藤 秀昭, 島津 弘, 清野 聡子, 長谷川 均, 堀 信行, 今里 悟之, 小野 林太郎, 高橋 そよ, 伊藤 幸司, 鈴木 淳, 井上 麻夕里, 藤田 喜久, 平林 頌子, 木村 淳, 中西 裕見子, 片桐 千亜紀, 山舩 晃太郎
配分額:42250000円 ( 直接経費:32500000円 、 間接経費:9750000円 )
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日本周辺の堆積物・サンゴ試料を用いた高時間解像度の気候復元と社会への影響評価研究
研究課題/領域番号:20H01981 2020年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
川幡 穂高, 井上 麻夕里, 鈴木 淳, 吉田 明弘, 大石 龍太
配分額:17160000円 ( 直接経費:13200000円 、 間接経費:3960000円 )
近年,完新世の気候変動は,人間の移動と発達に大きな影響を与えたと考えられている.日本では,中石器時代の文明は約16,000年前(縄文時代)に始まった.そして,3000年前頃,水稲栽培の技術を持った人々が中国本土から日本列島に移住し弥生時代となった.本研究では,水稲栽培の発祥の地である中国の浙江沿岸の沿岸から復元された古水温と比較するため,博多湾の堆積物より今回新たに古温度変化を復元した.アルケノンから復元した水温は18.7℃から21.8℃まで変動し,数百年から数千年のスケールで変動した.過去7,000年間の温度は数百年から数千年の規模で変動し,両者で類似していた.この中で約300年前と約4,200年前の寒冷イベントは,小氷期と4.2 kaイベントに対応していた.この「4200年前イベント」は, 2018年7月に国際年代層序表に関する国際層序委員会により完新世の中期/後期境界として正式に認定された.興味深いことに,場所によって乾燥,洪水,寒冷など特徴が異なっているものの,気候の異常が報告された地域はほぼ温帯域に位置していた.筆者たちは,私達の研究地域の寒冷化はアジアモンスーンや偏西風などの変調が原因と考えている.さらに,浙江海岸では,約4,200年前の寒冷イベントに伴い,沿岸湧昇が強化されたために寒冷化が増幅されたと示唆された.現代日本人の半分程度の遺伝子をもたらした祖先である弥生・渡来人は,4200年前は中国に暮らしていた.水稲栽培が始まった長江下流域では,文明が途絶えるほどの厳しい寒冷化を経験した.現代日本人の遺伝子の中に,当時中国に生活していた日本人の祖先の遺伝子を特定できる.この遺伝子のグループについて,過去の人口変動を現代人の遺伝子の解析から推定できる.このデータに基づくと,水稲栽培を生業としていた人びとの人口が大きく減少したことが示唆される.
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日本周辺の堆積物・サンゴ試料を用いた高時間解像度の気候復元と社会への影響評価研究
研究課題/領域番号:23K20242 2020年04月 - 2025年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
川幡 穂高, 井上 麻夕里, 鈴木 淳, 吉田 明弘, 大石 龍太
配分額:17160000円 ( 直接経費:13200000円 、 間接経費:3960000円 )
江戸時代は,北半球の平均気温が0.6℃ほど低下したと推定される「小氷期」と呼ばれる寒冷な時代であった.このように寒冷化が常態化した条件で,火山噴火やエルニ-ニョなどが起こると,極端な冷夏が訪れる.日本では江戸時代後半に顕著な冷夏により天明・天保の大飢饉などを経験した.
天明の大飢饉は主に極端な冷夏によって引き起こされた.これは1782~87(天明2~7)年の6年もの長期間継続した.特に甚大な被害を被ったのが東日本と東北日本であったが,九州,四国でも被害が報告されており,被害は全国的規模であった.幕府による1780年と1792年の人口調査によると,人口は1,119,059人減少となり,全人口の約3%に達する人命が失われたことになる.
従来,天明の大飢饉の主たる原因は,浅間山の噴火であると説明されてきたが,文献調査をしした結果,これは正しくないことが判明した.浅間山の本格的な噴火は1783年7月で,それ以前に飢饉の前兆となる「ヤマセ」が三陸海岸では吹いていた.1783年には青森県弘前市にある岩木山も噴火したので,東日本と北日本の耕作地は降灰を被った.降灰は農作物の収量低下を引き起こし,量が多くなると大凶作となる場合が多い.
東北地方は「天明・天保の大飢饉」を経験し,仙台藩の文書によれば米の収量が30%以下まで落ち込んだことが記録されている.私たちのこれまでの成果に基づくと,「天明・天保期の寒冷イベント」は過去8,000年間で最寒期であると予想される. 今回,松島湾内で堆積物柱状コアの入手ができた.松島湾は内湾で水深が4mと浅いが,江戸時代の環境復元に最適で,天明・天保期の堆積物は,海底面より20から40cmの深さにあると推定される.海底柱状試料を採取し,日本の歴史記録と環境の関係を明らかにしたい. -
人間活動が支配する新しい地球環境時代の開始とその評価に向けて
研究課題/領域番号:20K12135 2020年04月 - 2024年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
井上 麻夕里
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
本研究では東南アジア海域から採取されたサンゴ骨格試料を用いて、全球同時的な地球温暖化が開始した時期、および地球温暖化を含む全球規模の人間活動の局所的な海域への影響評価を目的としている。昨年度、バリ島のサンゴ年輪についてSr/Ca比および酸素同位体比を測定したところ、年輪カウントによる年数と化学分析による年数が一致していない箇所があり、サンゴの年輪形成機構について精査する必要があることが分かった。よって、本年度はインドネシア・ジャワ海のサンゴ試料について、微小試料採取を行い、細かくSr/Ca比およびMg/Ca比測定を実施し、骨格の密度バンド(年輪)がどのような環境で形成されているのか、ということについて調査を開始した。今のところ、Sr/Ca比の変動と密度パターンが毎年一致しておらず、必ずしも海水温が骨格密度を規定している要因だとは限らないことが推察されている。今後、異なる場所のサンゴ試料でも検証していく予定である。
また、すでに分析済みのフィリピンのサンゴ試料のSr/Ca比および酸素同位体比について228年間分のデータを見直し、再構築を行った上で、先行研究との比較なども実施し、論文を投稿した。新たな考察の結果、1800年代はクラカタウやタンボラのような大規模噴火に伴う寒冷化が何度か認められていたこと、1975年以降から全球規模でより画一的な温暖化が加速していることが分かってきた。同様に、バリ島のSr/Ca 比と酸素同位体比の結果についても、こちらは特にインドネシア通過流とその気候に及ぼす影響の観点からデータをまとめ、論文を投稿した。バリ島では全球規模の近年の温暖化に反して、寒冷化傾向が認められており、インドネシア多島海での海洋環境の複雑性、また気候の調節機能があることが示唆されている。 -
海洋酸性化が沿岸生物の世代交代、群集・個体群構造に及ぼす長期影響評価
研究課題/領域番号:19H04288 2019年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
高見 秀輝, 林 正裕, 井上 麻夕里, 村岡 大祐, 小埜 恒夫, 酒井 一彦, 井口 亮
配分額:17290000円 ( 直接経費:13300000円 、 間接経費:3990000円 )
二酸化炭素濃度を1000ppmおよび2000ppmに調整した海水と約400ppmの原海水(対照区)で4年間飼育したキタムラサキウニを親として用い、対照区の親から得られた子世代を1000ppmと2000ppmで飼育する実験区(非順化区)と、1000ppmと2000ppmで飼育した親から得られた子世代をそれぞれ親と同じ濃度で飼育する実験区(順化区)を設定した。各実験区の子世代について、受精後8日目の八腕期浮遊幼生の段階で腕長を比較した結果、2000ppmの非順化区のみ対照区と比較して平均値が低下した。以上から、幼生期における酸性化環境への順化・適応については2000ppmで影響が出る可能性が考えられた。親ウニの棘の微量元素の経年分析の結果から、幼生期は成熟個体よりも棘のMg/Ca比が高くなる傾向にあることが示唆された。造礁サンゴの三種の長期飼育実験に向けて、異なる二酸化炭素濃度条件で短期飼育実験を実施した。その結果、これらサンゴ種の長期飼育条件が明らかとなり、海水酸性化にエダコモンサンゴが最も脆弱であることが判明した。遺伝子解析について、サンゴのトランスクリプトームデータから、サンゴと褐虫藻に加えて、他の内在生物の遺伝子データの分離を行い、各生物での発現量マトリックスの作成を進めた。褐虫藻組成に関しては、ストレス暴露処理間では明瞭な差異は見られなかった。キタムラサキウニに関しては、ストレス暴露処理サンプルのRNA抽出を行い、RNA-seqによるショートリードデータの取得に成功した。魚類に関しては、トランスクリプトーム解析に向けたサンプル処理の準備を進めた。
二酸化炭素濃度の精度管理については、船舶観測用pCO2計を用いて飼育水のpCO2レベルを直接測定し、飼育実験装置のpCO2制御装置に生じたずれの検出とずれ補正式の作成を行いより精度の高い濃度管理が可能となった。 -
ドミニカ共和国沿岸の重金属汚染の時空間的推移と流入実態の調査と負荷源対策の検証
研究課題/領域番号:16H05631 2016年04月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
作野 裕司, 中井 智司, 鈴木 淳, 長尾 正之, 陸田 秀実, 西嶋 渉, 井上 麻夕里
配分額:16120000円 ( 直接経費:12400000円 、 間接経費:3720000円 )
ドミニカ共和国沿岸域への重金属の流出実態を把握するため,河口部におけるサンゴ試料の化学分析と衛星リモートセンシングや数値モデルによる流出パターンの解析が行われた.この研究により,首都サントドミンゴ周辺は生活及び産業廃棄物処理施設が不十分であることから,ハイナ川に代表される大河川から洪水に伴って重金属類が海域にもたらされる可能性が示唆された.特にバッテリー工場による鉛汚染を塊状サンゴにより検出できることが明らかとなった.さらに,ハリケーン等の洪水イベントによって他の汚染源からの深刻な負荷もあることも見出された.
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インドネシア通過流の表層環境が気候システムおよびサンゴ礁環境に及ぼす影響評価
研究課題/領域番号:15H05329 2015年04月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(A)
井上 麻夕里
配分額:24700000円 ( 直接経費:19000000円 、 間接経費:5700000円 )
ジャワ海に位置するインドネシア・セリブ島より採取されたサンゴ骨格試料についてストロンチウム・カルシウム比やウラン・カルシウム比、酸素・炭素同位体比を測定することで、過去約70年間の海洋環境を復元した。その結果、この海域ではこの70年間で海水温が約0.7度上昇していることが分かった。また、1970年代以降は化石燃料放出の影響を受けて海水のpHが低下していることも推察された。
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海洋酸性化の沿岸生物と生態系への影響評価実験
研究課題/領域番号:26220102 2014年05月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(S)
野尻 幸宏, 林 正裕, 井上 麻夕里, 酒井 一彦, 高見 秀輝, 井口 亮, 鈴木 淳, 石田 明生, 中野 智之
配分額:194870000円 ( 直接経費:149900000円 、 間接経費:44970000円 )
沿岸海洋生物の海洋酸性化影響を将来シナリオが予測するCO2濃度範囲を含めて実験した。わが国沿岸のサンゴ、二枚貝、ウニなどの種の影響評価実験と、特に昇温影響を受けるサンゴについて温暖化との複合影響評価を行った。アワビ幼生のCO2濃度日周変動を含む実験では閾値を越す度合の積算が影響する、沖縄のサンゴ種では酸性化と温暖化の両方が石灰化に影響するなどの知見を得た。生態系影響評価としてCO2濃度調整水槽への加入実験を行い、加入生物の炭酸殻のMg/Ca比に酸性化の影響が現れる結果を得た。魚類の再生産実験では魚種による酸性化への応答の違いが見られ、世代交代の早い魚種の継代飼育実験から順化の評価を行った。
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ドミニカ共和国における近過去から現在のバッテリー工場起源沿岸域鉛汚染の調査・解明
研究課題/領域番号:24404006 2012年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
中井 智司, 陸田 秀実, 作野 裕司, 奥田 哲士, 鈴木 淳, 長尾 正之, 井上 麻夕里
配分額:17420000円 ( 直接経費:13400000円 、 間接経費:4020000円 )
バッテリー工場由来の鉛による河川及び沿岸域の汚染状況を把握するため、ドミニカ共和国のハイナ川河口付近において底質や塊状サンゴを採取し、鉛含有量を分析した。そして、懸濁物質を指標として、衛星データを使ってハイナ川からの周辺海域への拡散状態の推定を行った。分光反射率とSSの関係を元に、解像度のよい衛星データからハイナ川河口部のSS分布を定量化するモデルを導いた。また、これらのモデルから実際のALOS AVNIR-2データを使ってSS等のマッピングを行った。ハイナ川河口部からカリブ海に流出する物質の拡散を三次元的に求めるため、海洋環境シミュレーションを行った。
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造礁サンゴ骨格による気候変動解析の新展開
研究課題/領域番号:24244090 2012年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
鈴木 淳, 酒井 一彦, 中村 崇, 岡井 貴司, 加藤 亜記, 張 勁, 中島 礼, 磯野 良介, 吉川 貴志, 井口 亮, 井上 麻夕里, 村山 昌平, 林 正裕, 堀田 公明
配分額:48620000円 ( 直接経費:37400000円 、 間接経費:11220000円 )
造礁サンゴ骨格に記録された気候変動情報は、精度や時間分解能の点で他の間接指標と比較しても良好な性能を持つ。本課題では、サンゴ骨格の「間接指標(酸素同位体比・Sr/Ca比)の成長速度依存特性」、「炭素同位体比の制御因子」、「種内変異(群体間差異)が抑制/拡大されるメカニズム」について、琉球大学瀬底研究施設の屋外水槽で長期飼育されたハマサンゴ試料を対象に検討した。炭素同位体比>酸素同位体比>Sr/Ca比の順でサンゴの健康状態(そして骨格成長速度)に影響される。Sr/Ca比は頑強で、優れた水温の間接指標である。これらの結果は、サンゴ骨格による気候変動研究の確度の高さを支持するものである。
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地球表層システムにおける海洋酸性化と生物大量絶滅
研究課題/領域番号:22224009 2010年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(S)
川幡 穂高, 鈴木 淳, 山岡 香子, 井上 麻夕里, 西弘 嗣, 山岡 香子
配分額:142610000円 ( 直接経費:109700000円 、 間接経費:32910000円 )
陸域の化学風化は,海洋酸性化にとっては「中和」として機能します.大陸の緩衝作用を確かめる目的でバングラデシュ,ミャンマー,タイの大河を調査しました.その結果,ヒマラヤ山脈源流の河川では大気中の二酸化炭素を吸収する効果は小さいことがわかりました.5,500万年前の暁新世/始新世(P/E)境界は「海洋酸性化」の地球的規模での実験と言えます.深海底では石灰殻の底棲有孔虫が絶滅し,生き残った有孔虫も膠着質の殻をもつものに変化してしまいました.現代はP/E境界の約30倍のスピードで二酸化炭素が放出されています.大陸風化は追いつけないので,将来深刻な海洋酸性化とそれに伴う絶滅が起こると予想されます.
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精密飼育実験に基づく間接指標の開発と低中緯度域の気候変動システムの解明
研究課題/領域番号:22244064 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
川幡 穂高, 鈴木 淳, 井上 麻夕里
配分額:23920000円 ( 直接経費:18400000円 、 間接経費:5520000円 )
研究の目的は,(1)サンゴ礁に生息する大型底棲有孔虫(Amphistegina lobifera,Marginopora kudakajimensis)を対象に精密飼育実験を行い,水温・塩分・pHに関して新しい環境間接指標を開発し,IODP(統合国際深海掘削計画)のグレートバリアリーフとタヒチから得られた試料に適用し,低緯度域のエルニーニョ・南方振動を明らかにする.(2)サンゴの飼育実験より,pH指標に関して,サンゴ骨格のU/Ca比などの新しい指標を開発するとともに,それを用いてpH時系列のデータを復元し,石灰化への影響,海洋環境や気候変動からの影響を明らかにする.(3)また,翼足類について,精密飼育実験を行い,水温・塩分・pHに関して新しい環境間接指標を開発するとともに,実海域での分布などを把握し,将来の海洋酸性化による影響を評価することである.
サンゴについては,試料を採取し,精密飼育実験のセットアップを行い,飼育を継続できた.現在,その試料について,1)酸素・炭素の安定同位体比,2)ホウ素同位体,3)微量無機元素などを分析中である.また,翼足類についても,プランクトンネットにても,現生の試料を採取した.そして,海水中の二酸化炭素濃度をコントロールした海水中で飼育中である. -
最終氷期最盛期の化石サンゴを用いた熱帯海域の海水温・塩分の季節変動復元
研究課題/領域番号:21740387 2009年 - 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B)
井上 麻夕里
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
最終氷期最盛期(LGM)における熱帯海域の海水温、塩分の季節変動の復元は、今後の気候変動を予測する上で重要なデータとなり得る。本研究では約22, 000年前の南太平洋のバヌアツから採取された化石サンゴ(Porites sp.)を用いてLGMの季節変動を明らかにした。その結果、LGMでは海水温に約5℃の季節性があったことが示唆され、現在(~ 3℃)に比べ海水温の季節変動が大きかったこと、特にそれが冬の海水温低下に起因していたことが示された。また、年平均の海水温は現在に比べ4. 5-5℃低かったことが推察された。
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造礁サンゴの骨格形成と環境情報を記録するメカニズムに関する研究
研究課題/領域番号:21340166 2009年 - 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
鈴木 淳, 井上 麻夕里, 酒井 一彦, 加藤 亜記, 岡井 貴司, 川幡 穂高, 村山 昌平
配分額:14820000円 ( 直接経費:11400000円 、 間接経費:3420000円 )
サンゴの炭酸塩骨格の化学組成は、古気候を推定する間接指標として広く用いられている。しかし、その記録プロセスには生物が介在するため、これまで十分に考慮されてこなかった環境-生物間相互作用に起因する「推定の不安定性」が存在する。本研究では、長期飼育サンゴについて、酸素同位体比およびSr/Ca比の気候指標としての安定性を検証した。また、琉球列島石垣島のサンゴ記録から復元された20世紀初期の海洋変動について考察した。
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ストレスとサンゴ礁の歴史的変化
研究課題/領域番号:20121004 2008年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
山野 博哉, 長谷川 均, 渡邊 剛, 井上 麻夕里, 鈴木 淳, 小熊 宏之, 白井 厚太朗
配分額:131950000円 ( 直接経費:101500000円 、 間接経費:30450000円 )
石垣島の陸域と海域を対象として、過去から現在にかけて土地利用図、空中写真、衛星データの画像解析と土砂流出モデルによる流入負荷の推定を行った。これらにより、土砂流出の増大によってサンゴの被度が低下していることを明らかにした。また、海域においては、化石と現在の塊状のサンゴからコアを採取し、骨格中に含まれる蛍光、同位体比、微量金属、密度に関する分析を行い、環境変化がサンゴ骨格に記録されるとともに骨格形成に影響を与えていることを示した。
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サンゴの閉鎖系飼育システムの開発とその骨格を用いた環境指標の高精度化
研究課題/領域番号:19840020 2007年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(スタートアップ)
井上 麻夕里
配分額:3105000円 ( 直接経費:2700000円 、 間接経費:405000円 )
サンゴ骨格中のストロンチウム/カルシウム(Sr/Ca)比やマグネシウム/カルシウム(Mg/Ca)比は、海水温指標としてこれまで世界的に広く測定されているが、近年これら微量元素が海水温のみではなくサンゴ骨格の成長速度にも依存している可能性が指摘されている。そこで本研究では、温度と光量のみを厳密に制御したサンゴの飼育実験を行い、Sr/Ca比はこれまでの報告と同様海水温に、一方Mg/Ca比は温度ではなく成長速度により強く依存して変動していることを明らかにした。
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サンゴ骨格を用いた熱帯域における微量化学物質による海洋汚染の精密復元に関する研究
研究課題/領域番号:04J03245 2004年 - 2005年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費
井上 麻夕里
配分額:1800000円 ( 直接経費:1800000円 )
人為起源の鉛は,有鉛ガソリンの使用,石炭燃焼や鉛・銅などの鉱山の採掘など主に工業化に附随して放出されることが知られているが,近年アジアにおいて工業起源の鉛の放出量が増加していることが指摘されている.前年度の研究から、西太平洋においては大陸起源の鉛が外洋表層まで広がっていることが明らかにされている。そこで今年度はサンゴ骨格を用いて,アジアから排出される汚染物質の影響を強く受ける西太平洋表層における鉛の時系列変動を明らかにした.試料は海南島,小笠原,ジャカルタ湾から採取されたサンゴ骨格(Porites sp.)を用い,過去それぞれ約10年間,100年間,70年間の鉛濃度変動を復元した.サンゴ骨格中の鉛濃度の測定はICP-MSを用いて行い,サンゴ標準試料であるJCp-1の15回の繰り返し測定による誤差は2.3%だった.
サンゴ年輪に沿った鉛の測定結果からは,小笠原,ジャカルタ湾ともに過去それぞれ100年,70年において鉛濃度が上昇傾向にあった.このことから,アジア大陸から西太平洋,インドネシア各都市からジャワ海へと放出されている人為起源の鉛が,過去70年以上にわたって増加し続けていることが明らかとなった.特に小笠原のコアからは、1950年以降に鉛濃度の急激な上昇が見られ、これは日本を始めとするアジア各国における工業化のためと考えられる。また海南島のサンゴ骨格からは,1997年に急激な鉛濃度の減少が見られた.中国沿岸部では1997年から無鉛ガソリンの導入が行われ始めたので,この無鉛ガソリンの導入に対応して,サンゴ骨格中の鉛濃度が減少したことが示唆された.