共同研究・競争的資金等の研究 - 山本 敏央
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限られた育種母本から高能率に遺伝的多様性を生み出す多系交雑育種システムの開発
研究課題/領域番号:20H02958 2020年04月 - 2024年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
山本 敏央, 小川 大輔, 米丸 淳一, 古田 智敬
配分額:17550000円 ( 直接経費:13500000円 、 間接経費:4050000円 )
品種改良や遺伝実験において、用いる集団の遺伝構成は目標の達成に大きな影響を与える重要な要素である。自殖性作物の育種では2種類の両親に由来する交雑集団から表現型をもとに優良個体の選抜を繰り返す方法が一般的だが,この場合,対立遺伝子の組み合わせが二つの親間のみに限定されることから多様性の拡大という点で必ずしも最適とは言えない。
課題担当者らは、これまでに複数品種の積み上げ交雑からなる多系交雑集団(Multi-parent Advanced Generation Inter-Cross ; MAGIC集団)の作出を開始し,8種類の国内多収水稲品種の8系交雑F1に由来し、これらゲノムがほぼ均等に存在する恒久的な自殖集団を育成した.これまでの遺伝解析で用いられてきたRecombinant Inbred Lines (RIL)集団,Genome Wide Association Study (GWAS)集団,Nested Association Mapping (NAM)集団等と比較して,本集団は多数のハプロタイプが交雑によって混合された集団という点でユニークなものである。MAGIC集団は由来親を識別する多数のハプロタイプ多型を活用することで,高精度な連関解析やゲノムワイド予測モデルの構築に貢献する。
今年度は、MAGIC集団がGxEの検出に有効かどうかを評価する実験を出穂期を例に行った。出穂期は日長の影響を強く受けることから、主要な感光性遺伝子の違いが表れにくい2地点として、比較的緯度の近い東日本のつくば市と西日本の倉敷市でMAGIC集団の出穂期を調査し、GWAS解析の結果をもとに地域共通および特有のゲノム領域の検出を試みた。 -
根圏生態系の季節変動から紐解く二毛作体系の生物学的な持続性
研究課題/領域番号:19KT0011 2019年07月 - 2022年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
谷 明生, 山本 敏央, 山地 直樹, 山下 純, 門田 有希, 中川 智行, 最相 大輔, 持田 恵一
配分額:18590000円 ( 直接経費:14300000円 、 間接経費:4290000円 )
植物の生育は植物の遺伝背景や環境要因等の相互作用の結果として捉えることができる。根圏微生物叢は植物の生育に多大な影響を与えており、逆に、植物の遺伝的背景や環境要因にも規定され、相互作用すると考えられる。本研究の目的は、圃場環境において微生物叢を含むあらゆるパラメータをデータ化し、それらの要因間のネットワークを可視化し,農業生態系としての季節変動動態を理解することである。
研究所実験圃場の慣行区と無施肥区において、アルミニウムに対する感受性の異なるイネとオオムギの品種対を対象に、隔週で各条件3植物個体ずつ(イネは6個体)サンプリングした。環境要因として、フィールドサーバーを用いて日照、降雨、温度、湿度、風向、風速を測定した。土壌環境データとして根圏土壌を採取し、ICP-MSによる水抽出可能な元素の組成を測定し、土壌センサを用いて土壌pHを測定した。さらに土壌の根圏微生物DNAを精製し、16S rRNA遺伝子アンプリコンシーケンスを行った。
施肥の有無によりイオン等の動態は変化し、pHは慣行区で低く、カリウム、リンは慣行区で高濃度であるが早い時期に消費された。慣行区の硫黄、無施肥区のマグネシウム、マンガン、銅が落水により増加した。同じく落水によると考えられるヒ素の増加、カドミウムの低下が無施肥区で見られた。
微生物叢は、イネではMassilia属、Pseudomonadaceae、Oxalobacteraceaeがstar1で多い傾向が見られた。オオムギでは根圏土壌と根のサンプルで相違が見られ、根のサンプルにのみJanthinobacterium, Methylibium属細菌が多く存在することが分かった。これらはオオムギ根のエンドファイトであると考えられ、そのオオムギに対する共生機構や成長への影響に興味が持たれる。 -
イネ小胞子に潜在する個体分化能と倍数化能を活用した育種基盤の新構築
研究課題/領域番号:19H00937 2019年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A) 基盤研究(A)
貴島 祐治, 山本 敏央, 長岐 清孝, 小出 陽平, 金 鍾明
配分額:45890000円 ( 直接経費:35300000円 、 間接経費:10590000円 )
本研究はイネの葯培養に関係して大きく2つの内容に大別される。1つ目は、葯の発達初期に内包されている小胞子が高い脱分化能と個体再分化能を有する点に着目した研究。2つ目は、アジアとアフリカに起源を異にする栽培イネの種間雑種の葯培養産物から倍数体(四倍体)植物個体が再生したことに端緒を得て始めた、小胞子の倍数性発生に着目した研究。
2019年度は本研究を行うために組織した分担者を交えて、7月7日に研究の進め方、それぞれの役割の確認を行う会議を開催した。本研究を構成する5つの問題は、1)小胞子から個体分化を誘導するメカニズム、2)イネ小胞子から効率的に個体を再生するシステムの構築、3)イネ種間雑種の葯培養個体で誘導される倍数性の発生メカニズムの解明、4)イネ種間雑種の葯培養個体によって雑種不稔性を回避する遺伝機構の解析、5)葯培養個体から生じた倍数体種間雑種による新しい育種材料の開発。上記の項目で2019年度において主に進展した研究は、3)および5)であった。
3)はO. sativaとO. glaberrimaのF1雑種や得られた四倍体の個体を用いて減数分裂の異常と倍数体形成が密接に関連することを示すデータを得た。減数分裂の第1分裂と第2分裂にそれぞれ非還元が発生することによって、倍数体の原資となる二倍性の配偶体が発生することが判明した。
5)はO. sativaとO. glaberrimaのF1雑種から葯培養を経て、多様な植物体を得ることができ、雑種不稔性遺伝子がヘテロ接合の場合(通常、二倍体では花粉が崩壊する)でも、稔性を有する四倍体を得、これらの個体をさらに葯培養によって二倍体に還元した稔性を有する個体を作出できた。さらに、F1雑種からの葯培養でも高い稔性を有する倍加半数体の二倍体個体を育成した。これらを用いて、現在稔性を獲得する原因を調べるため、遺伝的な解析を行なっている。 -
多収水稲品種が持つ登熟時の水伝導度を高める遺伝子の単離
研究課題/領域番号:17K07614 2017年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
山本 敏央, 安達 俊輔
配分額:4810000円 ( 直接経費:3700000円 、 間接経費:1110000円 )
1. アケノホシとコシヒカリの交雑集団を用いた候補ゲノム領域の特定
申請時点で4.2Mb となっていた候補領域周辺で組換えを起こした系統の出穂期以降の出液量の推移を調査して遺伝子の遺伝学的な絞り込みを行った。その結果、候補領域は第2染色体長腕のRM5460からRN3535の間の922kb に絞り込むことができた。候補領域周辺におけるアケノホシおよびコシヒカリのゲノム塩基配列情報の配列比較からさらに3個のINDELマーカーを作出し、候補領域内での更なる絞り込みに供試可能な組換え系統を得た。
2. 候補ゲノム領域に関するアケノホシ系譜上のハプロタイプの伝達の調査
候補ゲノム領域について日本晴を参照配列としてアケノホシとコシヒカリを比較した結果、得られた一塩基置換多型の殆どはアケノホシと日本晴が共通で、コシヒカリが異なるパターンを示した。またアケノホシの系譜における候補ゲノム領域は日本品種コチカゼに由来する可能性が高いことが示唆された。
3. 候補ゲノム領域をアケノホシ型に置換したコシヒカリ系統の特性評価
候補遺伝子を含むゲノム断片をアケノホシ型に置換したコシヒカリ準同質遺伝子系統について10 株×3 反復の簡易生検を行い、籾重、わら重、精籾重、精玄米重を評価したが、コシヒカリと比較して明瞭な差は見られなかった。また、ワグネルポットに生育させた登熟期の準同質遺伝子系統は、コシヒカリに比べて根の表面積が大きいことによって根の通水抵抗が小さく、結果として植物体全体の通水抵抗が小さくなることが示された。 -
ワイドターゲットメタボロミクスを基盤とした植物のシュウ酸蓄積分子機構の解明
研究課題/領域番号:16K20953 2016年04月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
宮城 敦子, 川合 真紀, 山口 雅利, 石川 寿樹, 長野 稔, 大野 豊, 長谷 純宏, 大川 泰一郎, 安達 俊輔, 野口 航, 常田 岳志, 臼井 靖浩, 中村 浩史, 酒井 英光, 長谷川 利拡, 山本 敏央
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
多くの植物に含まれるシュウ酸はヒトや家畜の有害物質である。しかしながら、植物のシュウ酸蓄積機構については不明点が多い。そこで、本研究では植物のシュウ酸蓄積機構を明らかにするため、イネにおけるメタボローム解析と分子遺伝学的手法を用いた解析を行った。その結果、イソクエン酸リアーゼ(ICL)が水没時の葉におけるイネのシュウ酸蓄積に関与する可能性が示唆された。また、イオンビーム照射イネから選抜した低シュウ酸個体では、一部の有機酸含有量の低下により低シュウ酸化したことが示された。さらに、コシヒカリとタカナリとでシュウ酸含有量が著しく異なり、この品種間差が特定の染色体部分領域に基づくことを明らかにした。
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実験系統群を用いたフェノーム解析と連鎖遺伝子の同定
2016年04月 - 2018年03月
農林水産省 次世代ゲノム基盤プロジェクト
山本 敏央
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
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バイオマスの増大に向けたイネ次世代育種法の開発と利用
2015年04月 - 2016年03月
農林水産省 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業
山本 敏央
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
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Rapid Mobilization of Alleles for Rice Cultivar Improvement in Sub-Saharan Africa
2014年01月 - 2018年06月
アフリカライス ビルアンドメリンダゲイツ財団
山本 敏央
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
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光合成効率を高めるQTLの単離と集積
2013年04月 - 2018年03月
農林水産省 次世代ゲノム基盤プロジェクト
山本 敏央
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
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系譜ハプロタイプ情報を利用したイネの食味関連領域の推定と検証
2013年04月 - 2015年03月
農林水産省 次世代ゲノム基盤プロジェクト
山本 敏央
担当区分:研究代表者 資金種別:競争的資金
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ゲノム情報を利用した作物学研究のためのシステム構築-稲の低温発芽性解明に向けて
研究課題/領域番号:13556004 2001年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
根本 圭介, 堤 伸浩, 鴨下 顕彦, 山本 敏央, 地主 健志, 小鞠 敏彦, 地主 建志, 山本 利央
配分額:14100000円 ( 直接経費:14100000円 )
稲のゲノム解読が終了しゲノム情報の作物の生産性向上への貢献に大きな期待が寄せられているが、このような応用研究進展上の大きな障壁の1つとなっているのが、農業形質の遺伝解析ための適切なリソースの不足である。こうした現状を鑑み、作物学研究者の視点を生かしたリソース育成を試みたのが本研究である。幸い、研究期間内に計4つのQTLマッピング集団(アキヒカリ(ジャポニカ水稲)×IRAT109(ジャポニカ陸稲)組換え近交系、熱研2号(ジャポニカ水稲)×伽耶(インディカ水稲)組換え近交系、亀の尾(ジャポニカ水稲)×Dular(インディカ天水田稲)組換え近交系、およびIR36(インディカ水稲)×GenjahWangkal(ジャポニカ陸稲)組換え近交系)を育成することができた。ターゲットは当初直播適性のみを想定したが、社会的ニーズを重視するという基本指針に則り農業上の重要性があれば他の形質も考慮に入れるという方針で仕事を進めた結果、それらは我が国の主要大学さらには中国の幾つかの大学などで広範に利用され、その成果をもとに平成17年度日本作物学会講演会においてシンポジウム「作物栽培学にとってなぜQTL情報が必要か」を開催することができた。なお、本研究では、民間企業と連携してリソースの増殖と分譲を民間企業に委託する可能性を探ることをも併せて試みた。この点に関しては、当初参画をいただいた企業の閉社のため具体的な事業としての成果をみるには至らなかったものの、稲のバイオテクノロジーをリードされてきた方々と踏み込んだ意見交換ができたことは大きな収穫であった。