共同研究・競争的資金等の研究 - 近森 秀高
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大規模アンサンブルデータを用いた事前放流における治水効果と利水運用リスクの定量化
研究課題/領域番号:23H02329 2023年04月 - 2027年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
工藤 亮治, 近森 秀高, 相原 星哉, 吉田 武郎
配分額:8190000円 ( 直接経費:6300000円 、 間接経費:1890000円 )
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メタ統計的手法を用いた確率水文量の推定手法の検討とその実用性に関する研究
研究課題/領域番号:21K05831 2021年04月 - 2024年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
近森 秀高, 工藤 亮治
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
本研究は,2021年度を最終年度とする基盤研究(C)(課題番号18K05879)の「ベイズ統計の理論を用いた既往最大規模豪雨および洪水の統計的評価に関する研究」の後継に位置付けており,メタ統計的極値分布の手法を,地域頻度解析に適用する手法の開発を研究目的の一つとしている。
これまで,地域頻度解析では,雨量データの統計値であるL積率比や緯度・経度を用いて地域分類をおこなってきたが,気候の経年変動を考慮すると,豪雨などの極端現象を代表とする年最大値の経年変化パターンの類似性に着目して地域頻度分析を行うことも考えられる。
ここでは,MEV分布についての検討の前段階として,年最大値時系列を対象とした下記の地域分類法について,(1) 各観測地点におけるL積率比と緯度・経度を用いたクラスター分析,(2) 各観測地点における年最大値時系列を平均値で除した基準化データを用いたクラスター分析,とを行った。
岡山県内の雨量観測点を対象として検討した結果,岡山県全体を1地域として解析を行うと,地点頻度解析による結果との差が大きくなり過大または過小推定と思われる結果が多いこと,地域分類を,年最大値時系列を用いた方法で行い,従来のL積率比による地域分類の結果と比べると,年最大値時系列を用いた地域分類の方が,地点頻度解析に近い結果が得られることが分かった。
以上の結果から,本研究で検討しているMEV法を用いて地域頻度解析を行うための地域分類について有用な知見が得られた。MEV法への地域頻度解析の適用では,地域を構成する全ての雨量観測点における雨量時系列データによる分類法を検討する必要があるが,そのためには年最大値を対象とした地域頻度解析について検討した結果に基づき,日雨量または時間雨量データを用いた適切な地域分類法を検討する必要がある。 -
事前放流支援に向けた中長期気象予報による河川流況アンサンブル予測システムの構築
研究課題/領域番号:20K06298 2020年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
工藤 亮治, 近森 秀高
配分額:4160000円 ( 直接経費:3200000円 、 間接経費:960000円 )
課題1について, アンサンブル流況予測システムのコアとなる水文モデルとしてタンクモデルを選定し,寒河江ダム流域に適用した.その結果,降雪量を補正して水収支をバランスさせることで実測のダム流入量が精度よく再現できることを示した.
課題 2について,レーダーアメダスを用いて流域平均降水量を保持しながら降雨の空間的な集中度のみを変えた模擬降雨を複数パターン作成し,集中型流出モデルをグリッドに展開した分布型モデルに入力することで,降雨の空間的集中度が洪水ピーク流量に与える影響を吟味した.その結果,流域平均降水量が同値でも降雨の空間的集中度が高いほどに,洪水のピーク流量が大きくなることがわかった.
次に,上記の流出計算で得られた計算流量を模擬洪水イベントとして,これを対象として集中型モデルのパラメータを同定し,降雨の空間分布の違いがモデルパラメータに与える影響を検討した.その結果,降雨の集中度の違いにより異なる性質のパラメータが同定されることがわかり,降雨の空間的な集中度が集中型モデルのパラメータの不確実性の要因となることがわかった.
課題3について,寒河江ダム流域を対象として,パターン認識法の一種であるNearest Neighbor法を適用して5日先までのダム流入量予測を行った.その結果,1日先までは精度よく予測できるものの,3日先以降では出水を過小推定するなど予測精度が大きく低下した.そこで,気象予測値としてバイアス補正済みの週間アンサンブル予報をNearest Neighbor法によるダム流入量予測システムに導入したところ,予測精度が大幅に向上し3日先の出水もある程度の精度で予測が可能となった.ただし,リードタイムが長くなるほど高水部の過小推定軽奥が大きくなった.この点は今後の課題である. -
ベイズ統計の理論を用いた既往最大規模豪雨および洪水の統計的評価に関する研究
研究課題/領域番号:18K05879 2018年04月 - 2022年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
近森 秀高, 工藤 亮治
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
本年度は,年最大値法,閾値超過法(POT法)とは全く異なるアプローチであるメタ統計的極値(MEV)分布を用いた解析法を,日本における日雨量データを対象として適用し,確率水文量の推定について検討を行なった。得られた結果は以下のようである。
(1)MEV分布への適用に適切な日雨量の確率分布の選択について検討した。ここでは,複数の地点における日雨量の分布に,それぞれガンマ分布,ワイブル分布,一般化ガンマ分布,混合指数分布,ピアソンIII型分布を用い,年最大値法により一般化極値分布の適応による推定値を真値とみなしてと比較することにより,適切な確率分布を推定した。その結果,日雨量分布にいずれの確率分布を用いた場合も,GEV分布による推定値よりも変動が小さかった。特に, GEV分布による推定値は,解析期間内に他の年最大日雨量に比べて著しく大きさが異なる日雨量のあった場合には確率日雨量の推定値が大きく変動したが,MEV分布による推定ではそのような影響は見られなかった。
(3)MEV法による確率日雨量の推定精度を検討するため,日雨量データの極値の「真の」確率分布として,複合ポアソンモデルにより模擬発生させた10000年間の日雨量時系列データから抽出した年最大値データと,各々の年最大値データの大きさの順位からワイブル・プロットを用いて推定した非超過確率との関係と,MEV法により推定された日雨量と非超過確率との関係とを比較した。その結果,適合度の評価基準にAICを用いた場合は,ピアソンIII型分布が選ばれる場合が多く,一方,確率プロット相関係数(PPCC)を用いた場合は対数正規分布や一般化ガンマ分布,混合指数分布など,裾が重い分布が選択されることが多くなり,違いが見られた。 -
大規模アンサンブル実験による渇水リスクの気候変動予測と不確実性の定量化
研究課題/領域番号:17K08004 2017年04月 - 2020年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
工藤 亮治, 近森 秀高
配分額:4680000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:1080000円 )
大規模アンサンブルデータセットd4PDFを利用し,全国の複数のダム流域を対象に渇水リスクの気候変動影響評価を行い,自然変動に起因する不確実性を分析した.影響評価では,代かき期と出穂期の10年確率渇水流量および年最大日流量から算出した10年確率日流量を水文指標とし,9,000通り(現在気候100メンバー×将来気候90メンバー)の変化率(将来気候下の水文指標/現在気候下の水文指標)を計算することで,その分布を吟味した.その結果,積雪地帯の代かき期を除いて変化率は大きくばらつき,地域によっては減少傾向と増加傾向が混在することが示され,極端現象において自然変動による不確実性が無視できないことを示した.
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微生物機能・安定同位体比分析に基づくベトナム中部沿岸地域の地下水窒素汚染機構解明
研究課題/領域番号:15H05255 2015年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
前田 守弘, 近森 秀高, 井上 大介
配分額:15990000円 ( 直接経費:12300000円 、 間接経費:3690000円 )
ベトナム中部沿岸農業地帯の地下水汚染は高濃度のアンモニアあるいは硝酸態窒素によって汚染されていた.形態別窒素安定同位体比分析によってその原因を調べたところ,生活排水もしくは家畜ふん尿の混入が主因だとわかった.土壌中の窒素循環に関わる機能遺伝子の種類は農地や時季で大きく異なったが,地下水汚染との関係は判然とせず,窒素循環機能遺伝子の構成が地下水汚染に直接的に重大な影響を及ぼしている訳ではないと示唆された.また,上流域からの流出,河道流,地下水流動を一体的に再現できる水・物質循環モデルを構築し,対象流域の地下水窒素動態を解析できる可能性を示した.
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研究課題/領域番号:26450344 2014年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
近森 秀高, 永井 明博
配分額:3250000円 ( 直接経費:2500000円 、 間接経費:750000円 )
全国の6流域それぞれにおけるレーダーアメダス解析雨量及び地域気候モデル(RCM)による将来の時空間降雨分布データに,6定数型の面積降雨-面積-降雨継続時間関係式(DAD式)を適応し,これに基づく洪水比流量曲線を用いて各流域における確率洪水比流量の将来変化を調べた。その結果,将来変化の傾向は流域によって異なり,とくに流域面積による洪水流量の増加傾向に違いが見られた。また,近年公表された全国各地における既往最大面積雨量のDAD関係から洪水比流量曲線を推定した結果,北海道南部などで,現在ダム設計基準等に用いられているCreager式,角屋・永井による式を上回る洪水比流量が推定された。
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地域洪水頻度解析に基づく確率洪水比流量曲線の推定に関する研究
研究課題/領域番号:23580336 2011年 - 2013年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
近森 秀高, 永井 明博
配分額:3640000円 ( 直接経費:2800000円 、 間接経費:840000円 )
河川流域における確率洪水ピーク流量を流域面積から推定する確率洪水比流量曲線を,気象レーダー及び地域気候モデルよる空間分布型雨量データの降雨継続時間-降雨面積-降水量の関係の確率統計解析によって推定する手法を開発し,岡山県吉井川流域を中心にこの手法を適用した。その結果,推定された200年確率洪水比流量曲線は既往最大洪水比流量をほぼ包絡できることを示された。また,100年後の将来,確率洪水比流量は増加し,その増加率は対象面積が大きくなるに従って大きくなる傾向が見られた。
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ベトナム中部におけるダム建設が河川およびラグーン水質に及ぼす影響の解明
研究課題/領域番号:22580274 2010年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
前田 守弘, 近森 秀高
配分額:4030000円 ( 直接経費:3100000円 、 間接経費:930000円 )
ベトナム中部フォーン川流域における河川,ラグーンの水質調査を行った.市街地では全窒素(2~20 mg L^<-1>),全リン濃度(0.3~1.6 mg L^<-1>)が,雨季,乾季を問わず,本流(<2 mg N L^<-1>, <0.1 mg P L^<-1>)より高かった.市内を挟んだ本川上流と下流の全窒素,全リン濃度を比較すると,下流で高く,市街地由来の負荷が影響していた.水田地域の全窒素濃度は 1~4 mg L^<-1>で施肥窒素の流出が考えられた.また,雨量を用いた簡易な流出解析による再現流出高と水質観測データとを併用することにより,フォーン川における無機態窒素負荷量を概算できることが示された。
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降雨パターンの長期的変化とその災害危険度に対する影響に関する研究
研究課題/領域番号:19580279 2007年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
近森 秀高, 永井 明博
配分額:2210000円 ( 直接経費:1700000円 、 間接経費:510000円 )
近年の気候変動に伴う降雨パターンの経年変化を日本全国で観測された長期の日雨量, 時間雨量, 10分間雨量を統計解析することにより調べ, 確率雨量が主に太平洋側で経年的に増加すること, 降雨は時間的に集中する傾向にあること, 少雨の頻度が全国的に増加する傾向にあることを示した。また, 長期の気象データを用いて長期流出解析を行い, 全国的に渇水時の流量が減少する傾向にあることを示した。
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東アジア域の水害生起と異常気象現象の遠隔影響および将来予測に関する調査研究
研究課題/領域番号:16404006 2004年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
寶 馨, 立川 康人, 近森 秀高, 河村 明, 牛山 素行, 吉谷 純一, 諏訪 浩, 石川 裕彦, 山本 晴彦
配分額:12400000円 ( 直接経費:12400000円 )
本研究では、東アジアの水災害の歴史的経緯と諸相を明らかにすることを目的として、エルニーニョ南方震動現象(ENSO)などの東アジア圏外のよりグローバルな気候、海洋気象要素との関連、水害の社会への影響と軽減の方策、今後予測される水害リスクを調査した。
研究成果の概要を述べると以下のようである。
(1)東アジア水害経緯図・年表の作成
災害発生に関する水文・水理資料、災害発生箇所、時期、人的被害状況、物的被害状況などのデータを、中国、韓国、ベトナム、フィリピンについて収集した。各国の自然的・社会的条件の変遷と人的被害、物的被害、洪水・渇水の規模と水害の発生状況の変遷を分析した。
(2)水害と異常気象の時空間相関及びテレコネクション
東アジア諸国での異常水文現象発生の経年的な特色と気圧配置などの気象変動との関連について、異常水文現象の生じた年の北極振動(AO)、南方振動指数(SOI)など空間分布パターンと集中豪雨及び災害との関係を、遠隔影響(テレコネクション)の観点から分析した。
(3)土地利用変化による水害発生ポテンシャルの解明
衛星画像・航空写真と各国の地形図、地質、土地利用などの主題図に基づく各国各流域の地表面変化の進展を整理し、洪水・渇水の被害ポテンシャルの変遷の関係を分析した。また、農地開発、都市化、貯水池の建造による流出及び水害ポテンシャルの変化を調べた。
(4)水害の生起特性、社会影響評価とリスク予測
各国・各流域の水害生起頻度の確率統計的分析の結果に基づき、水害(洪水・渇水)の頻度が時代の変遷とともにどのように変化しているかを明らかにした。また、水害の頻発が異常気象によるものであるか、人々の関心や報道通信体制の高度化による災害認識に関する社会の変化の結果であるのかを検討するための資料収集を行った。 -
法面被覆植物として活用可能な雑草の探索とその土壌侵食防止機能の解明
研究課題/領域番号:15380166 2003年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
足立 忠司, 沖 陽子, 永井 明博, 近森 秀高, 中嶋 佳貴
配分額:14100000円 ( 直接経費:14100000円 )
法面被覆植物の土壌侵食抑制機能はその生活型の相違によるとの観点から,被覆植物の生活型が土壌侵食抑制に及ぼす効果を検討した。実験は,傾斜10度のマサ土法面において,2m(W)×5m(L)の試験枠を設置し,下端に設置した導入板と貯水槽により,降雨毎の表面流去水並びに土壌侵食量を実測した。法面被覆植物としては,厳しい環境への適応力が高いと考えられ,かつ生活型の異なるギョウギシバ,ダイコンドラおよびヨモギの3草種を供試し,対照区としての裸地区と比較した。
得られた結果は以下の通りである。
(1)危険降雨期は5月〜11月であり,年降雨量が少ない場合でも,3mm/10min以上の降雨の頻度が高ければ,土壌侵食量は多くなる。
(2)対照区としての裸地区の土壌侵食量はわが国の許容量の限界値であったが,ヨモギ区とギョウギシバ区においては,許容量以下の侵食量であり,法面被覆植物の土壌侵食軽減効果が確認・定量化できた。草種間では,直立型のヨモギが優れていた。この傾向は,以下の現象も同様であった。
(3)この効果は,植物体の根系による土壌間隙の増大や植物体から供給される有機物分解(腐植)による土壌団粒の形成等による粗間隙の増大のために,降雨の降下浸透量の増大,地表面流去水の減少が生じることを明らかにした。
(4)また,腐植の増大は土壌のCECを増大させ,土壌構造のさらなる発達と,土壌環境を法面被覆植物の生育に適するものに改善する効果がある。
(5)法面被覆植物による酸性雨のpH軽減効果が認められ,土壌侵食抑制効果のみならず,大気環境悪化の生態系への影響を軽減する効果も確認できた。 -
非線形時系列解析手法を用いた実時間水文量予測に関する研究
研究課題/領域番号:14560199 2002年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
近森 秀高, 永井 明博
配分額:1000000円 ( 直接経費:1000000円 )
本研究では,ダム等の治水施設の効率的運用のために,豪雨時の流出および雨量の実用的な実時間予測法を開発することを目的として,非線形時系列解析手法を用いた水文量の実時間予測法についてその運用法および予測精度の検討を行った。まず,岡山県北部の黒木ダム流域における豪雨時のダム流入量実時間予測に局所線形近似法を適用し,その予測精度をNearest Neighbor法と比較した。その結果,Nearest Neighbor法では参照する過去のデータの最大流量以上の予測ができないのに対し,局所線形近似法では精度よく予測できることが分かった。また,従来よく用いられるタンクモデルにカルマンフィルターを併用した実時間予測法と比較した結果,同程度の予測精度が得られることが分かった。さらに,別の非線形時系列解析法として,ニューラルネットワーク型のアルゴリズムであるSOLOネットワークアルゴリズムを洪水実時間予測へ適用し,その予測精度を検討した。その結果,降雨および流量のデータから構成される特徴ベクトルを用いて予測した場合は,ネットワークの同定期間における精度は高かったが,検証期間における予測精度が大幅に悪化する問題点が見られた。降雨と流量のデータから得られる主成分得点を用いて特徴ベクトルを構成し予測を行うと,検証期間における流量の予測精度は改善され,局所線形近似法とほぼ同程度の精度が得られた。次に,洪水の実時間予測を行う上で重要な問題の一つと考えられる降雨の発生および雨量の実時間予測にNearest Neighbor法を適用し検討した。岡山における1〜3時間先の雨量予測を,岡山およびその周辺の123箇所のAMeDAS雨量観測点における時間雨量データに基づいて行った結果,降雨発生の予測精度はよかったが,雨量は大幅に過小推定される傾向があり,実用上問題であることが分かった。
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2002年朝鮮半島における豪雨洪水土砂災害に関する調査研究
研究課題/領域番号:14800007 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究促進費 特別研究促進費
寶 馨, 近森 秀高, 牛山 素行, 立川 康人, 橋本 晴行, 中北 英一
8月末から9月2日にかけて台風15号による豪雨のため、朝鮮半島東部を中心として甚大な水災害が発生した。韓国北東部の江陵市では8月31日までの間に総降雨量871mmという韓国史上最大値を記録し、それによって発生した土砂・洪水災害により246名の死者・行方不明者発生するという韓国における台風災害としては過去最大の被害となった。
本調査研究では、わが国と気候・風土・地形・生活形態・人口密度などの条件が極めて類似した地域で、なぜこのような人的被害の大きい水災害が発生したのかをあきらかにするために、韓国北東部太白山脈東側の江陵市と三陟市の都市域、およびその上流域の山腹地域における豪雨災害、韓国中部錦河上流の茂朱郡における河道・土砂災害、洛東江流域の河道災害を対象とし、豪雨・洪水・氾濫・土砂流出による被災形態の現地踏査、ヒアリング調査、豪雨防災情報の整備状況に関する情報収集を実施し、韓国全域の被災状況を衛星リモートセンシングを利用して抽出することを試みた。また、韓国水資源公社(KOWACO)、韓国気象局(KMA)と協力して、8月後半から9月前半にかけての韓国北東部を中心とした地域の降水量、レーダー雨量、河川流量などの水文観測データの収集を行った。こうした現地被災調査とデータ収集に基づき、以下の研究項目を実施した。
(1)豪雨の気象力学的・気侯統計学的解析と予測。
(2)土地被覆条件と災害生起の関係の解明。
(3)洪水流出・氾濫特性の日韓比較。
(4)土砂地盤災害発生メカニズムの究明。
(5)水災害とその予測の社会への影響評価。 -
低平農地における流出予測手法に関する基礎的研究
研究課題/領域番号:08760220 1996年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A) 奨励研究(A)
近森 秀高
配分額:800000円 ( 直接経費:800000円 )
農地主体流域における排水機場洪水位実時間予測の精度向上を目的として,従来の内水管理用タンクモデル(モデルI)の非市街地からの流出を表す上流域タンクに浸透孔を設けたモデルIIとこれに基づく予測システムIIを提案した。このシステムIIと従来からの予測システムIを新潟県亀田郷流域の亀田郷流域親松排水機場の洪水位予測に適用し,その予測精度を比較検討した結果は以下のようである。
1)上流域タンクに浸透孔を設けないモデルIを用いたシステムIを適用する場合は,上流域タンクを非線形・線形の2個として孔係数の初期値をオフライン計算によって最適同定された値に設定し,適応フィルタリングを用いて孔係数を逐次修正すれば実用上十分な精度で水位予測が可能である。ただし,上流域タンクの孔係数を固定する場合は,特にピーク付近での予測誤差が大きくなる。
2)非市街地からの流出を表す上流域タンク2に浸透孔を設けタンク底からの高さを持った1個の流出孔で流出を表現したモデルIIに基づくシステムIIを適用した場合,孔係数の初期値ににオフライン計算による最適同定値をそのまま与え実時間予測を行うことができる。この場合,適応フィルタリングとの併用法,孔係数を最適同定値に固定する方法のいずれを用いてもよい。
3)これまで検討してきた巨椋排水機場のように,他流域からの流入などのために支配流域の見かけ上の水収支が均衡している排水機場では,システムI,IIいずれも適用可能であるが,最適同定によって得られた孔係数などを基にモデルの物理性を考慮すると,システムIの方が望ましい。 -
都市水害の解析・防御のための地理情報システムとリモートセンシングの応用
研究課題/領域番号:07458086 1995年 - 1996年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
宝 馨, 大石 哲, 近森 秀高, 堀 智晴, 中北 英一, 岡 太郎
配分額:1100000円 ( 直接経費:1100000円 )
本研究では、都市水害の解析・防御を目的として、最新のGISとリモートセンシング(RS)データを研究の過程で利用している。以下に本研究の成果を要約する。
(1)宝は、庄内川流域のリモートセンシング(RS)画像をもとにさらに空間分解能の粗いRSデータを模擬生成し土地被覆分類、植生指標NDVI、蒸発散推定に及ぼす空間分解能の影響を定量的に明らかにした。また、矢田川流域において、50m及び250mメッシュの数値標高データと10mメッシュの土地利用数値地図、レーダー雨量を用いた分布型流出モデルを構成し、洪水予測精度を検討した。
(2)岡・宝・近森は、巨椋池流域においてこれまで蓄積されてきた河川水位、雨量データを整理するとともに、流域の状態を地形図、航空写真、現地踏査によって精査し、河川、排水路、地中の上下水道管、道路、用途地域の区画、等高線などのベクタ情報をGISを利用して入力・整備した。
(3)中北は、近畿及び九州のレーダー雨量データを整理するとともに、九州国見山レーダー雨量計に関し、鹿児島豪雨の生起した都市の年間の5分毎のレーダー情報のデータベースを用いた分析により、降雨分布と地形標高との強い線形関係を見出し、降雨布の確率モデルを提案した。
(4)堀は、水害避難行動ミクロモデルとGISをリンクすることにより、洪水-氾濫-避難の一元的なシミュレーションを行い、都市部における地形・浸水条件と、避難行動及び適切な情報提供の時期や形態との関係を明らかにした。
(5)近森は、内水排除のための排水機の最適運用を機場における洪水位予測に基づいて行う方法を示し、GISを用いた内水排除計画・施設管理の意志決定支援システムの基礎を構築した。
(6)大石は、気象庁の数値予報出力値(GPV:Grid Point Value)及びアメダス情報をGISに導入するとともに、定性推論及びモデルベース推論と呼ばれる情報工学的手法を用いて、都市水害を生起させるような局地的な降雨に対する短時間予測手法を開発した。 -
排水機場洪水位の実時間予測に基づく排水管理法に関する研究
研究課題/領域番号:06760211 1994年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A) 奨励研究(A)
近森 秀高
配分額:700000円 ( 直接経費:700000円 )
本研究では、3個のタンクからなる単純な洪水流出モデルにカルマンフィルターを併用した排水機場洪水位実時間予測システムについて、カルマンフィルターの適用条件およびモデルの単純化が予測精度に及ぼす影響と、この予測システムに基づく排水機制御システムの有用性について吟味した。得られた結果は以下のようである。
1.この予測システムを用いて、昭和47年7月および昭和61年7月豪雨時の巨椋・久御山両排水機場における洪水位の予測を行い、カルマンフィルターの適用条件と予測精度との関係について吟味した。その結果、状態変量の推定誤差分散行列の対角項は1×10^<-3>、システム誤差分散は1×10^<-2>〜10^<-3>、観測誤差分散は1×10^<-2>未満程度がよいことが分かった。
2.予測システムを単純化した場合の予測精度の変化について検討した。その結果、洪水位予測の際重要になるピーク水位の予測誤差に着目すると、a)上流域からの流出は非線形タンク1個で表現してもよいこと、b)上流域タンクの孔係数は流出解析の結果に基づいて固定しておいても実用上差し支えないこと、c)他流域からの流入やポンプのon-offにより水位変動が激しい場合は、氾濫域タンク水深をフィルタリングの対象とした方がよいこと、などが明らかになった。
3.セルフチューニングコントロール理論を適用して、排水機実時間制御システムを構築し、このシステムを巨椋流域で発生させた10〜100年確率の仮想出水に適用した。その結果、この制御システムを用いた場合、排水規則に準拠して排水量を決めた場合に比べ、洪水時のピーク水位はあまり変化しないが、流域低地部での湛水時間は大幅に短縮できることが分かった。しかし、水位低減時、排水機が激しい間欠運転が起こし、排水管理上問題となることも明らかになった。 -
都市域における環境用水とその創生に関する研究
研究課題/領域番号:04202125 1992年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 重点領域研究 重点領域研究
岡 太郎, 近森 秀高, 田中丸 治哉, 林 新太郎, 菅原 正孝
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
本研究では、居住環境のアメニティーを確保するための用水を環境用水と称し、都市域で必要な環境用水量を定量的に表示するとともに、その水源の確保・創生法を技術的に明らかにすることを目的としている。
1.環境用水の実態調査 潤いのある町として知られている島根県鹿足郡津和野町及び滋賀県琵琶湖東北部広域市町村圏、地方生活圏、モデル定住圏において、環境用水及び水需要特性・水管理の実態調査を実施した。津和野町での調査結果は昨年度とほぼ同等であったので省略する。滋賀県下の工業用水使用量は、この10年間で50%余りの増加を示したが、工業用水道が整備されている地域(例えば彦根市)では需給はそれほど逼迫することなく回収率(再利用率)は低い。一方、工業用水道がない地域(長浜市)では、水需要の増大の大半を回収率の上昇で補っている。したがって、回収率の低い地域では回収率の改善により環境用水の確保の可能性がある。しかし、いずれの地域についても、水資源は十分でなく、また上流域からの汚濁負荷の流下に対して下流に位置する都市単独での対応には問題があり、広域的な枠組みの中で水管理・環境用水の確保を考えていく必要がある。
2.雨水浸透処理による地下水涵養強化と揚水利用 雨水の一部を埋管浸透法を用いて地中に浸透させ地下水涵養を促進したのち、それを揚水して環境用水として用いることを提案している。本年度は、数値実験的に、埋管浸透量と埋管圧力・初期土壌水分量・降雨条件との関係を明確にするとともに、埋管よりの浸透量の実用的推定法を提案した。この方法により実流域で試算したところ、飽和透水係数が10^<-4>cm/s以上の地盤では、埋管浸透法は有効であるが、透水係数がそれ以下の地盤では、他の方法を併用して地下水の涵養強化を計る必要があることなどが明らかになった。併用する方法として、礫間貯留法を検討中である。 -
豪雨の時空間分布解析とその都市水害対策への応用
研究課題/領域番号:04201222 1992年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 重点領域研究
田中丸 治哉, 近橋 秀高
配分額:1700000円 ( 直接経費:1700000円 )
奈良県紀ノ川上流域、滋賀県愛知川上流域、および最近急速に都市化が進行している大阪府、奈良県の大和川流域を対象として、統計的手法により豪雨の地域分布特性を把握するとともに、その出水との関連について検討した。得られた研究成果は、以下のように要約される。
1.紀ノ川上流域、愛知川上流域、大和川流域において、19〜37個の出水、26〜40点の雨量観測所の豪雨資料を収集し、12〜48時間最大雨量を対象として主成分分析を行った。この結果、各対象地域はそれぞれ雨量特性が類似していると考えられる8〜9個の地象に分類され、豪雨は4〜6個のグループに分類された。大和川流域では、クラスター分析も行われ、主成分分析とほぼ同じ結果が得られることが確かめられた。さらに、それぞれの流域において大出水が発生する場合の雨量分布の特徴も明らかにされた。
2.紀ノ川最上流の大迫ダム流域を対象として、流域平均降水量推定法について検討した。まず長短期流出両用モデルに状態修正法を導入した洪水予測システムを利用して、17出水時の流域平均降水量を逆推定した。次いで、出水ごとの総降水量逆推定値を真値として、6種類の流域平均降水量推定法の精度を比較したところ、流域を標高別に分割する方法や線形回帰式による方法の精度がよいことが分かった。
3.愛知川上流域および大和川流域を対象として、パリオグラムを出水別に作成し、その雨量分布特性との関係について調べた。理論的なハリオグラムとして、観測点間距離の増大とともにある値に漸近する形状のものを採用し、漸近値(シル)と漸近値に到達する距離(レンジ)によってバリオグラムの形状をみると、局地的な集中豪雨ではシルが大きくレンジが短くなり、流域全域の雨量がほぼ均等になる場合は、シルが小さくレンジが長くなる傾向が確かめられた。 -
低平都市化域における内水排除施設の最適規模配置に関する研究
研究課題/領域番号:03201221 1991年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 重点領域研究 重点領域研究
角屋 睦, 近森 秀高, 田中丸 治哉
配分額:2100000円 ( 直接経費:2100000円 )
近年、内水災害危険度の高い低平地流域でも急速に都市化が進行しているが、それに対処すべき治水施設の規模配置の合理的な決定手法の確立を目的として、これに必要な基礎的諸問題を以下のように攻究した。
1.京都、彦根、奈良及び大台ヶ原の豪雨について、複峰型の場合に第2ピ-ク値は第1ピ-ク値の2/3以上という条件をつけると、ほぼ2/3以上は単峰、4/5以上は2山以下とみなせることが分かった。2山型を2個の2定数降雨強度式で表現できるものとして、誤差最小の観点から最適組合せを調べたところ、奈良では2個のTalbot型、大台ヶ原では久野・Talbot型という有用な結果が得られた。
2.前年度に引続き、一山降雨を想定して得られる累加流入量曲線を基礎として、排水機を効率的かつ安全に稼働させるために必要な前池容量の決定方法を検討した。その結果、前池の容量は降雨開始時の前池貯留量上限値と、排水機運転開始時間に左右され、前池貯留量が0で降雨開始直後に運転開始できるときに前池容量が最小になることを明らかにすることができた。
3.京都南部の古川流域を事例研究流域として、これまで、DP手法を用いて内水排除施設の最適規模配置問題を建設費最小化問題として最適解を検討してきた。今年度は、旧干拓田を含む全流域を対象として、年経費最小化問題として最適解を吟味するとともに、建設費最小問題との差異を調べた。その結果、大網としては両手法の解の間に大きな差異はないが、低平地の排水に従来のシステムを利用する方法と新規に排水機場を設置する方法に対しては、建設費最小化問題の解では大差はないが年経費最小化問題では新規の施設計画の方が優れていることなどが分かった。 -
排水機場前池の適正規模に関する研究
研究課題/領域番号:03760155 1991年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A) 奨励研究(A)
近森 秀高
配分額:500000円 ( 直接経費:500000円 )
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都市域における環境用水とその創生に関する研究
研究課題/領域番号:03202127 1991年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 重点領域研究 重点領域研究
岡 太郎, 近森 秀高, 田中丸 治哉, 菅原 正孝
配分額:1600000円 ( 直接経費:1600000円 )
本研究では、居住環境のアメニティ-を確保するための用水を環境用水と称し、都市域で必要な環境用水量を定量的に表示するとともに、その水源の確保・創生法を技術的に明らかにすることを目的としている。
1.環境用水の実態調査 環境用水の実態を明らかにするため、潤いのある町として知られている島根県鹿足郡津和野町及び内陸型工業都市である滋賀県長浜市において、用水源・取水施設・水路網・流量・事業所等における水管理及び地元住民の意識調査を実施した。その結果、津和野川の左岸に広がる市街地(26ha)には、幅0.7〜1.5mの水路が道路沿いに縦横に付設されており、1ha当り0.015m^3/sの流水が確保されていることが明らかになった。この流量は環境用水量を定量的に議論する際の目安になる。長浜市では、事業所の水管理について重点的に調査し、汚水処理法・排水経路などの実態を明らかにしたのち、水質の改善法及び排水の環境用水への転換の可能性について検討した。
2.地下水涵養強化と揚水利用 雨水の一部を土中に水平に埋設した孔あきパイプを通して浸透させ(埋管浸透法)地下水涵養を促進したのちそれを揚水して環境用水として用いることを提案するとともに、その技術的問題を実験的・理論的に検討した。その結果、埋管よりの浸透現象は不飽和浸透流理論を用いてうまく表せること、埋管よりの浸透量はPhilip型の浸透量式で近似しうることなどが明らかになった。次に、埋管浸透量式の係数と初期土壌水分量・土壌の透水性との関係を究明し飽和透水係数と初期土壌水分量を用いて浸透量を算出する手法を提案した。さらに、雨水浸透施設の設置効果などを検討する場合に欠かせない地盤浸透能の簡易測定法を開発した。これは、ハンドオ-ガ-を用いて孔を掘り、定水頭で注水して、浸透量を測定した後、その低減曲線より地盤浸透能を逆算する手法である。 -
低平都市化域における内水排除施設の最適規模配置に関する研究
研究課題/領域番号:02201228 1989年 - 1990年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 重点領域研究 重点領域研究
角屋 睦, 近森 秀高, 田中丸 治哉
配分額:3000000円 ( 直接経費:3000000円 )
近年、内水災害危険度の高い低平地流域でも急速に都市化が進行しているが、それに対処すべき治水施設の規模配置の合理的な決定手法の確立を目的として、これに必要な基礎的諸問題を以下のように攻究した。
1.大和川流域のような低平都市化域の対策を想定して、パタ-ン認識の手法を利用して奈良及び大台ケ原の豪雨波形の特性分析を試みた。この結果、大台ケ原では豪雨の核となる代表的な波形要素が抽出できたのに対し、奈良では抽出できなかった。両者の間には雨量及びその継続時間に大きな差があることも一因とみられる。さらに複峰波形の表現法を工夫した実用的手法が開発できる見通しを得ている。
2.前年度に引続き、一山降雨を想定して得られる累加流入量曲線を基礎として、排水機を効率的かつ安全に稼働させるために必要な前池容量の決定方法を検討した。その結果、前池の容量はその溢水を回避するための容量と、排水機の間欠運転を避けるための容量の和として表現できること、排水機能力の増加に伴い前者は減少するが後者は増大し、容量最小の解は存在するがそれは過大気味になること、小降雨時に許容すべき間欠運転回数の設定法などが攻究された。
3.京都南部の古川流域を事例研究流域として、内水排除施設の最適規模配置問題を建設費最小問題として、DP手法の定式化の方法、都市化・低平農地への超過洪水氾濫補償費などの諸要素が最適解に及ぼす影響などが攻究された。前年度では、これまでの計画の妥当性の検討に主眼を置いたが、今年度は将来の対策を主体として、前年度に十分検討できなかったいくつかの問題も詳細に検討された。その結果、新規の施設設置よりも、平成2年に新設の排水機場を含む現況施設の拡張ないし更新が最適解になること、下流側農地に溢水氾濫させ補償する案は、その額に一応の限界のあることなどが明らかにされた。 -
低平都市化域における内水排除施設の最適規模配置に関する研究
研究課題/領域番号:01601515 1989年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 重点領域研究 重点領域研究
角屋 睦, 近森 秀高, 田中丸 治哉, 岡 太郎
配分額:2300000円 ( 直接経費:2300000円 )
近年、内水災害危険度の高い低平地流域でも急速に都市化が進行しているが、それに対処すべき治水施設の規模や配置についての合理的な方法論はいまなお確立しているとはいいにくい。本年度は、こうした問題を科学的に扱うために必要な基礎的諸問題を以下のように攻究した。
1.急速な都市河川化の懸念されている大和川流域における豪雨の統計的特性を調べ、大和川流域のように平野部が多くかつ少雨地域では、主成分分析にクラスタ-分析を併用することにより、かなり有効な情報が得られることを示した。さらに、基準地点である柏原地点でのピ-ク流量との関係を検討し、長時間雨量よりもむしろ12時間程度の中時間雨量との間に強い相関が認められることなどを明らかにした。
2.有限要素法を利用する内水氾濫モデルを検討し、Galerkin法に基づく陽解法は計算精度に問題があるが、Taylor-Galerkin法を用いるとこれらの問題がほぼ解消することを示した。
3.排水機を効率的かつ安全に稼働させるために必要な前池容量の決定法として、一山波形降雨を想定して得られる累加流入量曲線を基礎とする簡便な方法を考案し、その妥当性をシミュレ-ション的に検討した。これから、豪雨時に間欠運転を起こさないような前池容量の設定は可能であるが、その容量は過大気味でなり、小降雨時に許容すべき間欠運転の回数、降雨開始から排水機停止までの時間の設定法などについての検討が必要なことが明示された。
4.京都南部の古川流域を事例研究流域として、内水排除施設の最適規模配置問題を「計画降雨による流出量の排除施設建設費を最小にすること」との観点からDP手法を用いて検討し、その定式化の方法、流域の都市化・低平農地への超過洪水氾濫補償費などの諸要素が最適解に及ぼす影響などを明らかにした。