共同研究・競争的資金等の研究 - 川田 力
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オーストリアにおける持続可能な都市マネジメントに関する地理学的研究
研究課題/領域番号:19K01170 2019年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
川田 力
配分額:3250000円 ( 直接経費:2500000円 、 間接経費:750000円 )
EUによる経済統合・政治統合が進むヨーロッパにおいては国家の領域内外における地域再編・地域統合が推進されることにより、国際的な都市間競争が激化している。しかしながら、オーストリアにおいては、2000年代以降、国内最大都市のウィーンが都市機能の順調な成長をみせる一方で、中小都市においても都市機能の維持や成長が確認されている。
このことを踏まえ、本研究は、各都市のおかれた社会経済的状況に差異があり、都市間競争への対応と都市の持続可能性への対応という2つの政策課題の調整が必要となっているオーストリアにおいて、各都市の都市マネジメント戦略を分析することで、都市の持続可能性に関わる地域的要因を解明することを目的としている。その際、都市マネジメントに関わる各ステークホルダーの関係性と、各ステークホルダーにおける地理的差異や空間構造に対する認識が都市マネジメントの多様性に影響を及ぼしていると考えられることにとくに着目する。
本年度は、上記の目的を達成するため、オーストリアを訪問し、現地調査を実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の拡大により現地調査の実施を断念し、一昨年度入手した資料の分析と文献研究によりオーストリアにおける都市マネジメントの背景となる最新のオーストリア空間開発構想2030について分析した。
その結果、オーストリア空間開発構想2030が、持続可能性、公益性、公正性を3つの柱とするものとなった経緯や、空間資源の効率的利用、社会的・空間的連携の強化、気候変動対策がなされた持続可能な経済圏と経済システムの開発、垂直的・水平的なガバナンスの構築を目的とする、気候ニュートラルとエネルギー転換に焦点をあてた空間開発や地域バリューチェーンと循環型経済の強化など、10項目の基本プログラムが策定された地域的背景等が確認された。 -
オーストリアにおける地域計画と中小都市の存立構造に関する地理学的研究
研究課題/領域番号:15K03009 2015年04月 - 2019年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
川田 力, ツィンマーマン フリードリッヒ・M
配分額:3510000円 ( 直接経費:2700000円 、 間接経費:810000円 )
オーストリアは地方分権的国家体制を取っていることもあり、各中小都市は地理的位置や、当該都市および周辺地域が有する産業基盤および経済状況を活かした特色ある持続可能な都市マネジメント戦略を立案し実行している。オーストリアの中小都市の発展においては、流入する外国人居住者への対応を含む社会的持続可能性への対応と環境的持続可能性への対応が重要となっている。
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ドイツ中小都市における商業集積地の存立構造に関する地理学的研究
研究課題/領域番号:24520892 2012年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
川田 力
配分額:3900000円 ( 直接経費:3000000円 、 間接経費:900000円 )
本研究の目的は、国際的都市間競争下に置かれているにも関わらず、持続的に発展しているドイツの中小都市の商業集積地の存続要因を検討することである。
本研究の結果、ドイツの中小都市の商業集積地においては、都市計画で大型商業施設の郊外立地を抑制していること、商業地区の整備と交通体系の整備を並行して実施していること、ショッピング以外の魅力づくりに取り組んでいることが存続要因となっていることが判明した。 -
国際的都市間競争下におけるウィーン市の都市空間再編事業の新展開
研究課題/領域番号:21520794 2009年 - 2011年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
川田 力, ファスマン ハインツ, ハインテル マルチン
配分額:2990000円 ( 直接経費:2300000円 、 間接経費:690000円 )
本研究の目的は、国際的な都市間競争が都市空間再編事業にいかなる影響を与えるのかをウィーン市を事例として検討することである。本研究の結果、事業期間を長期化することで急激な地域変容を回避するというウィーン市の緩やかな都市空間再編事業は、事業によるマイノリティ集団への影響を抑え、多文化共生の都市づくりを進めていることをアピールすることとなり、ヨーロッパにおける国際的都市間競争下では有効な戦略であることが判明した。
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EU統合に伴う中央ヨーロッパの都市再生プロセスとエスニック集団
研究課題/領域番号:18401002 2006年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
加賀美 雅弘, 小林 浩二, 森 明子, 横井 雅子, 中川 聡史, 川田 力
配分額:13920000円 ( 直接経費:11700000円 、 間接経費:2220000円 )
本研究は,中央ヨーロッパの大都市において近年進められている市街地を対象にした都市再生事業に伴う都市社会の変化の動向を明らかにするために,とりわけ外国人移民やロマなどのエスニック集団に着目し,彼らの生活行動や社会組織の変化と市街地再編事業との関係について検討した。その結果,EU からの補助を得た都市整備事業がエスニック集団のコミュニティ形成に一定の役割を果たす一方で,特に旧社会主義諸国においては急激な住宅整備事業によってエスニック集団の居住空間が変質するケースもあり,EU 拡大とともに進行する行政主導の事業がエスニック集団の生活を大きく左右する実態を明らかにすることができた。
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ソーシャル・ガバナンス化の進行に伴う都市空間の再編に関する日独比較研究
研究課題/領域番号:16320114 2004年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
川田 力, CAROLIN Funck, 由井 義通
配分額:9000000円 ( 直接経費:9000000円 )
本研究の目的は、コミュニティー組織やNPOが地方行政組織と協働している都市空間再編事業に着目し、従来型の事業進行プロセスとの差異、事業前後の住民活動パフォーマンスの状況などを日独比較の視点を加えて検討することにより、ソーシャル・ガバナンス化の進行が都市空間の再編にいかなる影響を与えるのかを検討することにある。
本研究成果の概要は以下の通りである。
(1)ドイツでは、都市内でもとりわけ多様な社会問題を内包している地区に注目してコミュニティー組織やNPOが主体となった都市空間再編事業が進められているのに対して、日本では行政参加やまちづくりに対する住民意識が高い地区を中心としてコミュニティー組織やNPOが主体となっだ都市空間再編事業が進められる傾向がみられる。
(2)ドイツにおいては、総合的な都市発展が主に地方自治体主導の施策として位置づけられていることに加え、近年はローカルアジェンダ21に基づくことが要請され、単なる住民の意見聴取のみならず、住民に動機づけを行うことにより多数の住民の多様な参画が企図されている。また、専門的な知識を持って都市計画に参加するNPO等の組織や住民参加を専門職とする人物の事業への関与がみられ、これらのことを通して自治体は公益を求めるとともに、様々な立場の住民や企業など多主体間の利益の調整をするガバナンスの要としての役割を果たしている。
(3)日本においては、コミュニティー組織やNPOが主体となった都市空間再編事業を進める際には、市政情報を積極的提供し、広範な市民参加を積極的に求める行政サイドの取り組みが重要かつ不可欠である。 -
高等教育修了者の地位形成に伴う空間的移動の研究
研究課題/領域番号:08780125 1996年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A)
川田 力
配分額:1000000円 ( 直接経費:1000000円 )
今日、総人口に占める高等教育修了者の割合が増加する中で、高等教育修了者間での階層細分化が進展している。そこで、本研究では高等教育修了者をさらに細区分し、個人のライフサイクルにおける地位形成過程に伴う空間的移動に焦点をあてることによって、教育水準の地域格差の形成プロセスをより詳細かつ具体的に把握することを試みた。研究の手順と成果は以下のとおりである。
(1)まず、事業所名鑑および各種統計から抽出された複数立地事業所を、事業の属性および事業所立地の空間的パターンを基準として類型化した。その結果、事業所立地の空間的パターンとして全国立地型・地域立地型・局地集中立地型の3区分が抽出された。(2)このうち、全国立地型に属し事業所数も多く、各事業所の業務内容が比較的均一と考えられる金融関係事業所を取りあげ、職員の空間的移動データの収集を行い、収集された空間的移動データを統計的に処理することにより地位形成過程と空間的移動パターンとの関係を検討した。その結果、当該事業所においては、地位形成過程において、高等教育修了者間での学校間格差が存在することが明らかになった。しかしながら、その格差は近年になるにつれ弱まる傾向が見られる。(3)また、全体として、個人の地位上昇に対応して全国レベルおよび大都市圏レベルで、より高次の都市へ空間的移動を行う傾向があることを確認された。これには、事業所の垂直的機能分業の状況および人事システムが強く影響していることが判明した。以上のことから教育水準の質的格差の形成プロセスには個人の地位形成過程とそれに対応した地位形成機会の空間的不均等分布が影響していることが明らかになった。 -
中四国地方における高等教育水準の地域格差
研究課題/領域番号:07780125 1995年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 奨励研究(A)
川田 力
配分額:900000円 ( 直接経費:900000円 )
ある地域の教育水準(本研究では,特定の学歴を持つ人口の地域総人口に占める割合と定義した),とりわけ高等教育水準は,高等教育機関の分布が偏在しているため,人口移動をともなった進学行動と高等教育修了後の就職行動によつて形成される.このうち進学行動には教育機会の分布状況が密接に関連している.教育サービスの提供は医療サービスの提供とならんで,わが国周辺部の公共サービス提供においては非常に重要な問題といえる.そこで本研究では大学進学を中心とした進学行動を分析することにより中四国地方における高等教育水準の地域格差発生メカニズムを明らかにしようと試みた.研究の手順と成果は以下のとおりである.
(1)まず,諸官庁・行政機関を訪問し,収集した統計資料にもとづき高等教育水準から中四国地方を類型化した.その結果,大学卒業者指数から半周辺地域(広島・香川県)・周辺地域I(岡山・鳥取・山口・愛媛・徳島県)・周辺地域II(高知県)の3地域区分が抽出された.(2)このうち,最も周辺性が高い周辺地域IIに該当し,高等教育進学問題が社会問題化している高知県を取りあげ,地域格差の発生のメカニズムを検討した.その結果,高知県では高知市を中心とした同心円状の地域格差構造および高知市以東対高知市以西の地域格差構造が重層的に見られることが確認された.さらに,これには高知県が高知市中心の単極型都市システムを形成していること,および公立高等学校通学区域制度による地域区分が存在することと,中高一貫の私立学校の高知市へ集中がしていることが影響していることが判明した.(3)また,野市町および葉山村でのヒアリング調査およびアンケート調査の結果より,大学への進学行動において,親の学歴および職業による規定性が多少存在することが明らかになり,高等教育水準の地域格差再生産のメカニズムに社会集団による行動様式が関係している可能性があることが明らかになった.