共同研究・競争的資金等の研究 - 谷 明生
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新手法によるAzospirillum属細菌の網羅的分離と分類
研究課題/領域番号:23658080 2011年 - 2012年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
谷 明生, 中川 智行, 三井 亮司
配分額:3900000円 ( 直接経費:3000000円 、 間接経費:900000円 )
Azospirillum属細菌は植物根圏に共生し、窒素固定を行い、植物の生育を促進可能な細菌の一群である。本属細菌の分離には工夫が必要で、また分類系統も良く確立しておらず、共生する植物との関連性も分かっていない。本研究では広く植物から本属細菌を分離することと、質量分析法を用いた新しい手法で効率よく網羅的に分類すること、同時に新種菌を見いだし分類系統に新たな知見を加えることを目的としている。本属細菌の分離には窒素源を含まない培地を用いた微好気条件が重要であることを見いだし、約60株の本属細菌を分離した。質量分析により正確な分類を行った。またイネに対して約20%の生育促進効果を持つ菌を分離した。
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メタノール資化性細菌のゲノム解析による植物生育促進作用の解明
研究課題/領域番号:21780074 2009年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
谷 明生, 金原 和秀
配分額:4680000円 ( 直接経費:3600000円 、 間接経費:1080000円 )
様々な植物に高い生育促進効果を持つMethylobacterium sp.22A株を選抜し、ゲノム解析を行った。これにより、コンティグ数490、平均コンティグサイズ16kbpのドラフトゲノムデータが得られた。ゲノムサイズは7.7Mbpで、プラスミドは6つ存在した。植物との相互作用に重要と考えられるメタノール資化経路、窒素固定、ビタミン合成系などの遺伝子を同定した。現在重要な遺伝子の破壊株の作成中である。
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スフィンゴモナス属細菌のポリエチレングリコール分解メガプラスミドの環境中挙動
研究課題/領域番号:19780060 2007年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
谷 明生, 金原 和秀, 河合 富佐子
配分額:3710000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:210000円 )
人工化合物であるポリエチレングリコール(PEG)の有力な分解菌であるSphingomonas属細菌はPEG分解遺伝子をプラスミドにコードしている。このプラスミドは接合伝達で他の菌にも移ることが示唆されているが、その宿主特異性などは明らかではない。本研究ではPEG分解菌が持つプラスミドの環境中での挙動を解析するにあたり基礎的な知見を蓄積し、PEGの完全分解に関わる遺伝子群を明らかにした。
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芳香族化合物分解好熱菌の代謝酵素群のネットワーク形成に関する研究
研究課題/領域番号:18580077 2006年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
金原 和秀, 谷 明生, 河合 富佐子, 清水 頼子
配分額:3850000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:450000円 )
芳香族化合物を分解する微生物は、その能力を進化の過程で獲得してきたものと考えられている。本研究では、これまで解析された例が少ない好熱性細菌に着目し、ナフタレン代謝酵素遺伝子群の解析を行うことを目的とした。その結果、遺伝子の単離とナフタレンによる誘導性を見出すことが出来た。しかし、ナフタレンを代謝する過程で生理活性が著しく低下することが分かり、酵素機能と代謝ネットワークの詳細を解析するにはいたらなかった。
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アルミニウム耐性菌による酸性土壌の改良とアルミニウム耐性の分子機構
研究課題/領域番号:17580065 2005年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
河合 富佐子, 金原 和秀, 谷 明生, 清水 頼子
配分額:3610000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:210000円 )
近年酸性雨のため生産性土壌でも酸性化が進んでいる。土壌の酸性化は金属を溶出させるが、Al3+は生物学的に不要で、生物毒性があり、農業生産や自然に影響を与える。植物に対するAl毒性はよく研究されているが、土壌微生物に対するAlの影響に関する研究、特にAl3+が存在するpH3以下の条件で生育可能な耐性菌の研究はほとんどない。Al3+の土壌微生物に対する影響とその耐性を総合的に解明し、土壌の物性と植物の生育の両面から酸性土壌の改良に応用することは食糧生産、環境保護と改善に大きく貢献する。本研究では、1) Penicillium janthinellum F-13による土壌改善、2)P.chrysogenum IFO4626由来Al耐性変異株からえたAl遺伝子をタバコに導入して調べる、3)タイ及び国内茶畑土壌の微生物群集解析を行う、4)Rhodotorula glutinis IFO1125の新規Al耐性機構の解明を行うことを目的とした。1)に関しては、いくつかの酸性土壌で実地検証した結果を論文1)としてまとめた。また、胞子の耐久性、F-13株の接種条件等についてもデータを得た。2)は2種類の遺伝子を選んで、タバコを形質転換し、T2世代の種子を発芽させて、Ruakura培地(pH4.3)でAlCl3を0-50μM添加条件で根の伸長を測定した。しかし、有意差のある結果はえられなかった。培地を変えて調べるとともに、植物と微生物ではAl耐性遺伝子の役割が異なる可能性もあるので、他の遺伝子についても調べる。3)通常の土壌と酸性土壌の微生物群集比較解析の結果、酸性化は微生物叢の構成を大きく変える可能性が示唆され,酸性雨は土壌微生物生態にも大きく影響することが推定された。4)Al毒性は活性酸素種による脂質、蛋白質の酸化によると推定した。Al暴露に対する耐性株はミトコンドリの数と機能を強化して対処していることを明らかにし、Microbiologyに受理された。さらにAlによる発現促進は核遺伝子でも観察され、その中から3遺伝子を選んでクローニングし、S.cerevisiaeの相同遺伝子欠損株に導入して耐性の増加を確認し、現在投稿中である。
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Sphingomonas属細菌の細胞表層機能と合成高分子の分解
研究課題/領域番号:14560068 2002年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
河合 富佐子, 谷 明生
配分額:2700000円 ( 直接経費:2700000円 )
本研究ではポリエチレングリコール(PEG)ポリビニルアルコール(PVA)資化性Sphingomonas属細菌を用いて、専ら分子生物学的なアプローチで分解遺伝子とそのオペロン構成及び発現解析を行った。
PEG脱水素酵素遺伝子(pegA)を中心に上下流合わせて約14kbの塩基配列を解読した。ORFはtransposases (A, B), Ton B receptor, aldehyde dehydrogenase, permease, acylCoA ligase, Ara C-type regulator, transposases (A, B)に該当し、この配列はS. terraeおよびS. macrogoltabidus strains 103 & 203に99%以上の相同性で保存さていた。これらの遺伝子群はトランスポゾンを除いてPEG培地で誘導的に発現した。また、逆向きに挿入されたAra C-type regulatorを除いてmonocistronicに発現することをdot-blot hybridizationおよびRT-PCRで確認し、5つがPEG分解オペロンを構成すると判断した。一方、S. macrogoltabidus 203のpegA上流には別のトランスポゾンが挿入され、pegAのの構成的な発現はトランスポゾンの挿入でpromoter領域が分断されたものと結論づけた。他方、aldehyde dehydrogenase遺伝子の発現タンパク質について酵素の特性を調べ、PEG-aldehyde dehydrogenaseであることを確認した。本酵素は結合型のNADPを有するnicotinoprotein aldehyde dehydrogenaseとしてはじめての報告である。
他方、酸化PVA加水分解酵素(OPH)を精製し、精製酵素のアミノ酸配列を下に遺伝子をクローニングした。遺伝子は大腸菌で発現できたが、酵素はinclusion bodyを形成した。この遺伝子の下流にPVA dehydrogenase (pvaA)とcytochrome cのORFが存在することを確認した。遺伝子ophとpvaA間にはほとんどspaceがなく、共発現していると考えられる。
表題としてあげた細菌の細胞表層構造はPEG(PVA)培地と栄養培地では電顕観察で大きく異なる。この変化とオペロンの遺伝子構成を結論づけるには至らなかったが、さらにそれぞれの上下流の塩基配列を解読中であり、細胞表層にコードされていると思われる遺伝子が含まれるので、これらの機能解析を進めて細胞表層における高分子の認識/取込みと遺伝子制御を関連づけるのが今後の課題である。 -
細菌によるアルカン分解機構の解明とそれを利用した鯨油に代わるワックス類の生産
研究課題/領域番号:14760050 2002年 - 2003年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
谷 明生
配分額:1900000円 ( 直接経費:1900000円 )
原油中の主成分であるn-アルカンを分解できる微生物については細菌・酵母・カビに至るまで数多くの報告があるが、現在までに知られている中でAcinetobacter sp.M-1株は最も長鎖の成分(炭素数30以上)を分解できる細菌として例を見ない分解特性を持っている。本菌は常温で個体である成分にまで旺盛に生育することから、その強力な分解活性と、代謝産物であるワックスエステルの合成力とを用いて廃油や自然環境に放出された原油成分から、現在天然には利用できない鯨油に代わるワックス類の生産に結びつけることを目的とした。
このようなバイオコンバージョンを目的とする場合は分解機構の解明とそれに関わる遺伝子・酵素群に関しての情報が必要であることから、一つ一つの反応を行う酵素について性質を調べてきた。特に本研究ではアルカン分解とワックス合成との分岐点であるAcyl-CoA脱水素酵素を本菌より精製、遺伝子をクローニングし、その性質を調べた。
本菌はAcyl-CoA脱水素酵素を少なくとも二つ保持しており、それらの遺伝子はタンデムに染色体ゲノム上に配置されていた。これらの遺伝子がコードする酵素はそれぞれ長鎖、中鎖のAcyl-CoAに活性を示し、基質特異性が異なることを明らかにした。これらはその基質特異性から、それぞれ長さの異なるアルカンに生育するときに必要な酵素であると考えられる。このように同じ反応を行う酵素でも長さの異なる基質に対応して複数の酵素を持つことは、本菌においてすでにいくつかの事例(アルカンヒドロキシラーゼ、アルコール脱水素酵素、アルデヒド脱水素酵素)で発見しており、本菌が中鎖から極長鎖までのアルカンに生育する特性を酵素レベルで明らかにしたと言える。
今後は本遺伝子の破壊株等の構築と、それを用いたアルカンからワックス生産への収率の増大を試みる。