共同研究・競争的資金等の研究 - 坂倉 彰
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α-ケトエステルの触媒的不斉付加反応の開発に基づくアミノ糖類の合成法の革新
研究課題/領域番号:18K05123 2018年04月 - 2021年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
坂倉 彰
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
アミノ基やヒドロキシ基が連続して結合した鎖状の炭素骨格は,アミノグリコシド系抗生物質やアミノ糖類の基本構造である。これらの構造を立体選択的に化学合成する新しい方法が求められている。本研究では,その合成法の一つとして,α-ケトエステルの立体選択的な付加反応を鍵工程とする合成経路を立案した。
研究代表者は,これまでに,様々な炭素-炭素結合形成反応を立体選択的に促進することができるキラルなルイス酸触媒や有機分子触媒を開発してきた。これらの中には,その触媒の作用機構を考察すると,α-ケトエステルを活性化し,その付加反応を立体選択的に促進することができると期待されるものが存在する。そこで本研究では,研究代表者が開発したルイス酸触媒や有機分子触媒を活用する複数のアプローチを考案し,α-ケトエステルを基質とする立体選択的な付加反応の開発を行う。具体的には,1.α-ケトエステルとイミンとの不斉Mannich反応の開発,および,2.α-ケトエステルに対する炭素求核剤の不斉付加反応の開発を行う。これらの不斉反応を開発することにより,アミノ基やヒドロキシ基が連続して結合した鎖状の炭素骨格を立体選択的に化学合成する方法の開発を目指す。開発の中心となるのは,ルイス酸触媒や有機分子触媒を反応に合わせて精密設計することである。触媒の機能のみならず,基質の保護基の構造なども最適化して反応遷移状態の立体配座を制御することにより,望みの立体選択性の発現を目指す。 -
分子内n-カチオン相互作用を利用した有機分子ルイス酸触媒の精密設計
研究課題/領域番号:26105739 2014年04月 - 2016年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 新学術領域研究(研究領域提案型)
坂倉 彰
配分額:7020000円 ( 直接経費:5400000円 、 間接経費:1620000円 )
1.カチオン性キラルホウ酸エステル触媒の精密設計
我々はこれまでに,配位子のルイス塩基性部位と金属カチオンとの相互作用(n-カチオン相互作用)を鍵とする分子設計により,優れた基質一般性を示すキラル金属ルイス酸触媒の開発に成功している。この研究を基に,これまであまり研究が進んでいないカチオン性ルイス酸性有機分子触媒の精密設計を行った。分子内のルイス塩基性部位による相互作用によってカチオン性をもたせつつ安定性を確保する触媒設計である。N-アルキルアミノアルコールとホウ酸トリメチルからカチオンホウ酸エステル触媒を調製し,trans-シンナムアルデヒドとシクロペンタジエンのDiels-Alder反応においてその触媒活性を検討した。その結果,収率は低いものの,中程度のエナンチオ選択性でDiels-Alder付加体得ることができた。
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2.亜リン酸エステル-ウレア協働作用型触媒によるエナンチオ選択的ブロモ環化反応の開発
キラルな亜リン酸エステル-ウレア協働作用型触媒の精密設計に基づき,2-ゲラニルフェノール誘導体のエナンチオ選択的ブロモ環化反応の開発を行った。触媒構造や反応条件を精査した結果,良好なエナンチオ選択性で,対応するブロモ環化生成物を得ることができた。特筆すべきは,2つの環を形成したAB環生成物よりも1つの環のみが形成されたA環生成物の方がエナンチオ選択性が高かったことである。A環生成物が生成する際の遷移状態において,基質のヒドロキシ基と触媒のウレア基とが水素結合を形成することにより,遷移状態の立体配座が適切に制御されたものと考えられる。 -
バイオミメティックなアプローチによる高次機能触媒の精密設計
研究課題/領域番号:23350039 2011年04月 - 2014年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
坂倉 彰
配分額:19370000円 ( 直接経費:14900000円 、 間接経費:4470000円 )
酸・塩基複合化学を基盤とし,弱い二次的相互作用や酸・塩基二重活性化などという生体内酵素の触媒作用を手本とした触媒設計により,高選択的合成プロセスを開発した。具体的には,水中で機能するエステル脱水縮合触媒の開発,エナンチオ選択的炭素―炭素結合形成反応(Diels-Alder反応,ポリエン環化反応,ヨードラクトン化反応)の開発,酸・塩基二重活性化機構を鍵とする高機能アシル化反応(イサチン類のエナンチオ選択的シアノエトキシカルボニル化反応,α-ヒドロキシカルボン酸のアミド脱水縮合反応)を達成した。
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酸・塩基複合化学を基盤とする高次機能触媒の精密設計
研究課題/領域番号:20245022 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
石原 一彰, 坂倉 彰, 波多野 学, UYANIK Muhammet
配分額:49660000円 ( 直接経費:38200000円 、 間接経費:11460000円 )
有機反応の反応性のみならず、官能基選択性、立体選択性、位置選択性、エナンチオ選択性、基質選択性を自在に制御するためには、触媒の精密設計が必要不可欠である。酵素は複雑な生体内においても完璧に近い反応制御を担っているが、小分子サイズの人工触媒での制御は困難である。本研究課題では、高度な触媒機能を発現するために、「酸・塩基複合化学」を基に予め緻密に設計した酸と塩基を複合し、その非結合性の化学的相互作用を触媒機能に利用する研究を遂行した。その結果、いくつかの新規酸・塩基複合触媒を創出し、従来技術を凌ぐ反応制御に成功した。
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カルボン酸の触媒的脱水縮合による酸無水物合成プロセスの開拓
研究課題/領域番号:20655019 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 萌芽研究 萌芽研究
坂倉 彰
配分額:3600000円 ( 直接経費:3600000円 )
カルボン酸無水物は、DMAP触媒によるエステル化反応を始めとする様々な反応に用いられている有用なアシル化剤である。カルボン酸無水物は、カルボン酸の触媒的脱水縮合で合成されるのが最も理想的である。しかし,これまでのところカルボン酸の直接脱水縮合に有効な触媒は開発されておらず,カルボン酸塩化物やジシクロヘキシルカルボジイミドのような脱水縮合剤を用いるのが一般的である。これらの従来法では,副生成物として腐食性の塩化水素が発生したり,多量の副生成物が生成したりするという問題がある。そこで,本萌芽研究では直接脱水縮合によるカルボン酸無水物の合成に有効な触媒の開発を行った。
カルボン酸の活性化に有効な触媒を中心に詳細な検討を行った結果,いくつかのアリールボロン酸がカルボン酸間の直接脱水縮合に対して良好な触媒活性を示すことを見出した。特に,2,6位にジアルキルアミノメチル基やトリアルキルアンモニウムメチル基を持つアリールボロン酸が優れた触媒活性を示し,炭化水素などの非極性溶媒中で脱水加熱還流させることにより,対応するカルボン酸無水物が良好な収率で得られた。例えば,2,6-ビス[(N,N-ジイソプロピルアミノ)メチル]フェニルボロン酸触媒(10 mol%)存在下,ピロメリット酸のオクタン溶液を12時間脱水加熱還流させることにより,耐熱性ポリイミド樹脂の原料であるピロメリット酸無水物をほぼ定量的に合成することに成功した。また,低収率ではあるがモノカルボン酸の分子間脱水縮合によるカルボン酸無水物の合成にも成功した。 -
生物活性物質合成を指向した環境低負荷型触媒的脱水反応の開拓
研究課題/領域番号:18750082 2006年 - 2007年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
坂倉 彰
配分額:3700000円 ( 直接経費:3700000円 )
高効率的な触媒的脱水縮合反応(脱水環化反応)の開発およびそれを利用した有用生物活性物質の合成研究を行った。多くの生物活性物質に含まれるチアゾリンは、システイン残基の脱水環化によって合成できるが、C5エキソメチン部位のラセミ化が深刻な問題である。本研究では、このラセミ化を引き起こすことなくシステイン残基の脱水環化を促進できる触媒として、酸化モリブデンービスキノリノラート錯体の開発に成功した。本触媒を用いる合成法により、生物活性物質の合成に有効なチアゾリンやオキサゾリンを含むビルディングブロックが効率よく簡便に合成できる。
リン酸モノエステルはリン酸とアルコールの触媒的脱水縮合によって合成するのがもっとも理想的である。昨年度開発した過酸化レニウム触媒法に引き続き、新規なリン酸の脱水縮合法の開発を行った結果、ホスファゼン塩基が優れた触媒活性を示し、リン酸モノエステルが選択的に合成できることを見出した。本研究成果は、有機触媒によるリン酸の脱水縮合としての初の成功例であり、核酸塩基部を保護しなくてもヌクレオシドの5'水酸基が選択的にリン酸化できるのが特長である。
DMAP触媒を用いた酸無水物によるアルコールのアシル化が無塩基・無溶媒条件下で効率よく進行することを見出した。本反応条件下、酸に不安定な3級アルコールや反応性の低いフェノール類、難溶性のポリオールなどのエステルが高収率で合成できた。また、ピバル酸無水物を用いることにより、無塩基・無溶媒条件下でのカルボン酸とアルコールの直接エステル化にも成功した。無塩基・無溶媒で実施できるため、小規模な反応容器で大量のエステルが合成でき、極めて実用性の高いエステル合成法である。 -
環境調和型高活性酸・塩基触媒の開発と高効率的精密合成法の開拓
研究課題/領域番号:15205021 2003年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
石原 一彰, 坂倉 彰, 波多野 学, 赤倉 松次郎, 幅上 茂樹
配分額:51480000円 ( 直接経費:39600000円 、 間接経費:11880000円 )
地球環境問題が深刻化するなか、物質文明社会の持続的発展には、環境調和型製造法の確立が最重要課題である。本研究プロジェクトでは環境に優しい生体酵素反応に着目し、数万を優に超える分子量からなる酵素タンパクゆえの「環境低負荷反応条件での高度な触媒機能」を小分子レベルでフラスコ内に再現することができれば、環境調和型物質文明社会の発展に貢献できるとの考えのもと、研究が遂行された。その結果、石原らは数百の分子量からなる小分子の中に酵素類似機能を組み込むために、一つの触媒分子内に酸と塩基を効果的に配置することによって、非結合性の化学的相互作用(水素結合、親水力、疎水力、双極子相互作用、π-π電子相互作用など)を巧みに生み出し、酵素レベルの触媒機能を制御することに成功した。こうして、石原らは触媒回転効率の向上はもちろん、原子効率(生成物/原料)の向上、エコファクター(廃棄物/生成物)の低減、毒性化合物使用量削減などの問題に積極的に取り組み、酸・塩基複合型小分子人工酵素を鍵とする実用性の高い触媒反応プロセスを世界に先駆けて次々と開発した。例えば、有機アンモニウム塩触媒の疎水機能を利用したカルボン酸とアルコールの等モル混合物からのエステル脱水縮合反応、ルイス酸・塩基複合触媒を用いるリン酸とアルコールの等モル混合物からのリン酸モノエステル脱水縮合反応、キラルヨードニウムイオンを開始剤とする鎖状ポリプレノイドのエナンチオ選択的ドミノ閉環反応、有機酸・塩基触媒によるベックマン転位反応、キラル有機塩触媒によるα-(アシロキシ)アクロレインとジエンのエナンチオ選択的ディールス・アルダー反応、ヒスチジン由来のスルホンアミド触媒を用いるラセミアルコールの不斉アシル化反応、酸塩基共役触媒によるアルデヒド及びケトンのエナンチオ選択的アルキル付加反応等を挙げることがきる。
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アクチン脱重合活性をもつ海洋天然有機化合物の探索
研究課題/領域番号:15710155 2003年 - 2004年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
坂倉 彰
配分額:3700000円 ( 直接経費:3700000円 )
アプリロニンAは海洋動物アメフラシから単離された抗腫瘍性物質である。従来の抗腫瘍性物質とは異なり、細胞骨格タンパク質のアクチンの重合・脱重合に関与することは分かっているが、抗腫瘍活性発現の分子機構は現在のところ不明である。そこで、アクチンとアプリロニンAの結合を化学的に明らかにすることを目的として、以下の研究を行った。活性に重要な側鎖部に光反応基と蛍光基を有するプローブ分子を4種類合成し、光親和性標識実験を行ったところ,1つのプローブ分子において,光標識されたアクチンを電気泳動で検出することに成功した。さらに,アプリロニンAとの競合実験により,プローブ分子がアプリロニンAと同じ位置でアクチンに結合していることを明らかにした。また,アクチン-アプリロニンA複合体の結晶化に成功し,放射光を用いて結晶構造解析を行った。その結果,アプリロニンAはアクチンのサブドメイン1と3の間の脂溶性クレフトに結合することが明らかになった。さらに詳細に複合体の構造を検討したところ,これまで報告されているアクチン脱重合マクロリドとは異なり,ラクトン部がサブドメイン1の方を向いて結合していることが分かった。この特徴的な構造がアプリロニンAの強い抗腫瘍性に関係するものと考えられる。
また、アプリロニンAと同様にアクチンを脱重合するミカロライドBの側鎖部を合成した。このもののアクチン脱重合活性を測定したところ,アプリロニンAに匹敵する非常に強い活性を示した。 -
アクチン、ホスファターゼなどの生体高分子と複合する有機化合物の創製と反応
研究課題/領域番号:13024215 2001年 - 2002年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特定領域研究
木越 英夫, 坂倉 彰
配分額:4200000円 ( 直接経費:4200000円 )
有機小分子と生体高分子との相互作用の研究は有機化合物による分子認識機構を解明するとともに医学・生物学の分野では生物活性物質の作用機構解明や医薬品開発につながる必須の研究領域である。今回、対象生体高分子として細胞骨格タンパク質のアクチンと新型のプロテインホスファターゼに着目した。
海洋動物アメフラシから単離されたアプリロニンAは、細胞骨格タンパク質のアクチンに作用する新しい型の抗腫瘍性物質である。これまでの知見よりアプリロニンAの側鎖部がアクチン脱重合活性に重要な部分構造であることが判明していたので、アプリロニンAの約十分の一の活性を持つ側鎖部人工類緑体に光アフィニティ官能基を導入した誘導体2種を合成した。これらの化合物とアクチンの反応を行ったところ、アクチンを効率良く標識することが明らかとなった。現在は、標識部位の特定のために、標識体の酵素加水分解と断片の構造を検討している。
最近、9-アントラセンカルボン酸(9AC)に阻害されるこれまでには知られていない型のプロテインホスファターゼが存在していることが報告された。そこで、9AC誘導体を設計・合成し、これらのブロテインホスファターゼ阻害活性を検定した。その結果、3位にリンカーをつけた誘導体は目的とする酵素を阻害することが分かった。
新型の海洋産細胞毒性物質ハテルマライドNAの構造確定と標的分子検索を目的として、合成研究を行い、提出していた構造を修正した。