共同研究・競争的資金等の研究 - 駄田井 久
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持続可能な食料供給システムの構築に向けた外国人技能実習制度の課題に関する実証研究
研究課題/領域番号:20KK0043 2020年10月 - 2026年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B)) 国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
二階堂 裕子, 駄田井 久, 東口 阿希子
配分額:13780000円 ( 直接経費:10600000円 、 間接経費:3180000円 )
本研究では持続的・安定的な食と農業のサプライシステムの構築に向けて、人的資源としての外国人技能実習生が果たしうる役割に着目する。特に、近年ベトナムが技能実習生の最大の送出国であるとともに、日本の農業・食料関連産業がベトナムの生産拠点と密接な分業体制を築きつつあることに鑑み、両国をとりまく今日のフードシステムにおいて、いかなる技能・知識の活用、および人材の獲得が求められているかを解明する。そのために、ベトナム人研究者との連携による調査研究を行い、両国にとって有意義な人材育成の道筋と、外国人技能実習制度の課題を提示することを最終的な目的とする。
令和3年度も、コロナ禍の収束が見られないなかで、ベトナムでの勉強会とフィールドワークを見送る結果となった。そのため、研究メンバーは、オンライン会議システムを活用したミーティングを3回実施した。ミーティングでは、ベトナムにおける有機農業の現状整理、農業における高付加価値化の推進の可能性、家族経営農業にとっての技能実習生受け入れの意義などをテーマとして、それぞれ報告と議論を行った。また、海外渡航の規制緩和が進んだ際の調査計画や時期などについても検討を加えた。
このほか、ベトナムに帰国した元技能実習生を対象とするインタビューも、オンラインによって実施した。対象者は、日本で環境保全型農業に携わり、帰国後、習得した知識や技能を活用した農業を営んでいる。こうした農業実践を開始した動機やそれを可能にする要因などを聴き取った結果、彼が有機農法を取り入れて付加価値の高い農産物を生産することに新たなビジネスチャンスを見出していくプロセスが見て取れた。今後、こうした事例調査の蓄積によって、フードシステムに関する技能や知識の活用をめぐる類型化をめざす。 -
高度経済成長期農家経済のミクロデータ分析-農業センサスの保存と活用の基盤確立ー
研究課題/領域番号:19H03059 2019年04月 - 2023年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
仙田 徹志, 辻 一成, 有本 寛, 松本 武祝, 金子 治平, 藤栄 剛, 駄田井 久, 草処 基, 山口 幸三, 吉田 嘉雄
配分額:17290000円 ( 直接経費:13300000円 、 間接経費:3990000円 )
本研究の目的は、戦後、高度経済成長期までの農林業センサス個票の体系的保存とミクロデータとしての利用の基盤を確立することである。高度経済成長期の農家調査の個票の復元、そして調査票の世帯情報に基づくパネルデータ化は、同時期の我が国の農業構造変動のミクロ計量経済学的な解明だけではなく、連結情報が存在しない1995年以前のセンサスデータのマッチングの手法開発に寄与し、センサスパネルデータを既存の1995年~2015年よりもさらに延長させることにより、長期のパネルデータ構築の可能性を高めることにも貢献する。初年度には、東大資料の電子画像化の試行を実施し、試行の結果、十分に解読可能な状態で電子画像化できることが明らかとなり、個票の復元に向けたテンプレート作成と入力の試行も実施した。また佐賀資料については、予備調査を実施していた。
今年度の研究実績の概要は、以下の通りである。第一に、前年度の試行結果を受けて、東大資料の電子画像化と復元作業を実施した。第二に、佐賀資料の収集と電子画像化を実施した。佐賀資料の収集は、とりわけ1970年と1975年を重点的に行った。また、複数年次にわたる調査票が残存している市町村を対象に、農業集落別にみた調査票の残存状況調査を実施した結果、完全に残存していないことが明らかになる一方で、旧市区町村単位では、1965年から1980年まで継続していると判断されるものがあることも確認され、先行して復元し、詳細を確認することとした。 -
外国人技能実習制度の課題と可能性―環境保全型農漁業の技能移転を焦点とする実証研究
研究課題/領域番号:18K01985 2018年04月 - 2022年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
二階堂 裕子, 駄田井 久
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
本研究では、外国人技能実習制度を活用した環境保全型の農漁業の技能移転に焦点をあて、これを媒介としたベトナムと日本の両国における課題解決の可能性を追究することを目的とする。
令和元年度は、以下の調査を実施した。第1に、ベトナムにおける環境保全型農業の現状に関する情報収集のため、ベトナムを2回訪問した。まず1回目は、ベトナム国家大学ホーチミン市人文社会科学大学の地理学者らと研究会を開催し、現地の環境保全型農業に対する社会動向などについて情報交換を行った。2回目は、コショウやカカオの生産地であるドンナイ省を訪れ、有機農法実践家を対象に、有機農法の採用に至った経緯と成果に関するインタビュー調査を行った。また、有機農法を採用している農家と採用していない農家の両者に対し、有機農法に対する意識と今後の展望について、質問紙調査を行った。
第2に、日本の農業分野に派遣された外国人技能実習生の就労状況を把握するため、愛媛県内において有機農法によるミカンの栽培と加工、販売を行う地域協同組合で、フィールドワークを実施した。この組合では、ベトナム人とフィリピン人の技能実習生を受け入れながら、6次産業化を精力的に進めていることから、技能実習生の就労・生活状況や地域住民との関係、有機農業の実施状況などについて、参与観察を行った。このほか、香川県内のベトナム人技能実習生就労先農家において、インタビュー調査を実施した。
第3に、環境保全型農業の推進に関して、国際比較の視点から中国に注目し、農業・畜産業を主要産業とする内モンゴル自治区を2回訪問した。1回目は、現地の大規模な畜産・乳製品製造会社と環境保全型農業を実践する農家において、インタビュー調査を行った。2回目は、内モンゴルの持続可能な発展をテーマとした国際会議(内蒙古農業大学主催)に出席し、研究報告および各国の研究者らとの意見交換を行った。 -
メンタルヘルスフィールドとしての中山間地域農業の可能性に関する研究
研究課題/領域番号:18K05868 2018年04月 - 2022年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
駄田井 久, 二階堂 裕子
配分額:3510000円 ( 直接経費:2700000円 、 間接経費:810000円 )
2019年度も昨年度に引き続き農業・農作業のメンタルヘルス的な効果にこだわらず,多面的な機能の役割と評価に関して調査・研究を実施した。
岡山県真庭市を対象に,1)住民の液肥利用農産物の評価,2)バイオマス利活用の循環システムに関わることによる住民意識の醸成効果について明らかにする。選択型実験を適用し,住民の液肥利用作目への評価を計測した結果,液肥利用農産物を通常の農産物よりも高く評価(1/2カットの白菜21円)をしていたことが明らかとなった。一方で,真庭市産であることに対しては評価をしていなかった。「バイオマス産業都市」である真庭の知名度を活かしての「真庭市の産液肥利用農産物」ブランド化が課題になると考えられる。
住民の家庭系生ごみのバイオマス利活用と住民意思との関係に関しては,関りが無い住民の方が,関りがある住民よりもいずれの意識(環境問題意識,エネルギー問題意識,地産地消意識,地域愛着,バイオマス利活用事業のイメージ)も高い傾向にあった。その要因としては,家庭系生ごみのバイオマス利活用には,各家庭での生ゴミの分別・搬出が必要。ベトナム中部沿岸に位置するテュアティエン=フエ省では,TG-CHラグーン)周辺でエビ養殖が盛んに行われてきた。この地域では,エビ養殖池の増加により,TG-CHラグーン周辺のマングローブ林の違法伐採や池からの排水による海水質汚染が大きな問題となった。この様な集約的なエビ養殖は,Monocultureと呼ばれ,エビ単一種のみの養殖方法である。一方で,複数の異なる種(エビ・カニ・魚・海藻など)を一つの池で養殖するPolyculture(複合養殖)が環境への影響が少なく,持続的な養殖方法であるとされている。本研究では,エビ養殖農家のへのインタビュー調査を実施し,Polyculture養殖普及の過程と現状を整理し,今後の課題を考察した。 -
日本語学習活動を核とした移住労働者の社会的統合―ベトナム人技能実習生を事例に
研究課題/領域番号:15K03904 2015年04月 - 2018年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
二階堂 裕子, 駄田井 久
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
本研究では、日本の企業や地域社会で実施されている日本語学習活動を、外国人技能実習生をめぐる課題の解決策のひとつとして位置づけ、その意義を明らかにしようとした。
得られた主な知見は、以下の通りである。第1に、企業が日本語学習や帰国後就労の支援に尽力している場合、日本での就労経験に対する技能実習生の満足度は高い。第2に、帰国後、日本で修得した技能や日本語能力を活用して再就職できた元技能実習生の場合、来日前よりも職業的地位が上昇する傾向にある。一方、経験と能力に見合った就職先のない人も多い。第3に、過疎化が進む中山間地域で、地域住民と積極的に関わった技能実習生は、日本語の能力を高める傾向がある。 -
農林業センサスの客体情報のリンケージによる高度分析基盤の確立
研究課題/領域番号:15K14812 2015年04月 - 2017年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
仙田 徹志, 藤栄 剛, 駄田井 久
配分額:3770000円 ( 直接経費:2900000円 、 間接経費:870000円 )
本研究の目的は、農林業センサスにおける客体情報を用いて、農林業センサスの高度利用に向けた基盤構築を行うことである。本研究の遂行により、以下のことが明らかとなった。(1)農林業センサスの調査票の残存状況の整理では、県によっては20~80%の市町村で調査票の残存が確認され、貴重な資料群の存在が明らかとなった。(2)農林業センサスの年度間のデータリンケージでは、1995年から2010年までの4時点のリンケージを実施した結果、4時点すべてで販売農家として存在していた客体は、全体の約45.8%となり、長期のパネルデータの構築が可能なことが明らかとなった。
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農業統計における個別情報のリンケージによる高度分析基盤の確立と応用
研究課題/領域番号:25660179 2013年04月 - 2015年03月
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 挑戦的萌芽研究
仙田 徹志, 藤栄 剛, 駄田井 久
配分額:4030000円 ( 直接経費:3100000円 、 間接経費:930000円 )
本研究の目的は、農業統計における個別情報を用いて、年度間あるいは統計調査間のデータリンケージを行うことである。データリンケージにより、パネルデータ化や統計調査間での調査票情報の相互補完が可能となり、統計調査の高度利用が実現できる。本研究の遂行により、集落営農をはじめとして、複数の農業統計調査のリンケージが行われた。集落営農実態調査のデータリンケージの結果、最長9年連続の調査がなされている集落営農が40%あることが明らかとなった。また、農業統計の調査票の残存状況の整理では、60%程度の集落で調査票が残存している可能性があることが明らかとなった。
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経済レント概念を用いた農村資源取引市場創設の可能性と社会的経済厚生の計測
研究課題/領域番号:20380124 2008年 - 2010年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
佐藤 豊信, 駄田井 久, 松下 秀介, 藤本 高志, 千田 雅之
配分額:7670000円 ( 直接経費:5900000円 、 間接経費:1770000円 )
本研究においては,「経済レント・マーケットの形成」による農村資源の効率的な活用方策を検討した。以下の5点に取り組んだ。(1)「経済レント」を活用した農村資源取引市場システムの制度設計(資源経済学の理論モデルを応用)。(2)各種農村資源の,資源需要者・供給者間における経済レント指標の作製(資源経済学の理論モデルを応用)。(3)農村資源取引市場の運用システムとして,WWWによる分散情報の集中管理と連携の利用可能性検討(情報システム工学のモデルを応用)。(4)農村資源取引市場における決済手段の有効性評価。地域通貨を含めた,各種決済手段の有効性比較(金融工学の理論モデルを応用),(5)農村資源取引市場導入による社会的経済厚生の計測(産業連関分析モデルを応用)。
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持続的な農業生産システム構築に向けたシミュレーションモデルの構築
研究課題/領域番号:18780168 2006年 - 2008年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(B) 若手研究(B)
駄田井 久
配分額:2250000円 ( 直接経費:2100000円 、 間接経費:150000円 )
食料安全保障の水準から日本国内で保全すべき農地面積の計測を行い,保全すべき農地面積の水準を明らかにするシミュレーションモデル【食料安全保障の水準からみた農地保全水準モデル】を構築した。
耕作放棄発生の要因を定量的に分析し構造モデルを構築する必要がある。構築された構造モデルに基づき,耕作放棄発生のシミュレーションモデルを構築し,将来的な耕作放棄発生の予測行った。 -
食料安全保障の視点から見た粗放型中山間農地管理技術の経済分析と資源管理制度の設計
研究課題/領域番号:15380152 2003年 - 2006年
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
佐藤 豊信, 横溝 功, 千田 雅之, 駄田井 久
配分額:6400000円 ( 直接経費:6400000円 )
本年度の研究では,深刻な耕作放棄地問題を抱えている中国中山間地域,関東地域および九州地域を調査対象として,下記の3項目に関して研究を進めた。
1.岡山県高梁市有漢町を対象とし,数理計画法を応用して,今後の10年間および20年間における集落内の利用可能労働資源量の計測を行い,農家の労働資源量だけでは耕作放棄地発生を防止できないことを明らかとした。この間題を解決するため,集落内に居住する非農家を新たな労働資源として位置づけ,こうした労働資源の有効活用により,耕作放棄地発生を防止できることを明らかとした。
2.実態調査をもとに,中山間地域での肉用子牛生産を含む営農モデル,および集落営農モデルを構築し,農林地の放牧利用の展開による集落全体の農林地管理労務,農業所得,温暖化影響の変化を試算した。その結果,低米価による稲作収益低下傾向の中で,放牧利用が耕作放棄地の解消,農用地管理の省力化,農業所得の増加,温暖化抑制のすべての点において,稲作営農よりも優位であることが明らかにされた。
3.大規模化する畜産経営の経営展開には,限られた経営資源の集中と選択が不可欠であり,事業部門の外部化が求められる。具体的には,事業の外部化として,コントラクターの利用が挙げられる。本年度は,大分県の稲わらを集草し,畜産経営に販売するコントラクターの情報を収集し,コントラクターの組織・事業・経営について,現状と課題について整序を行った。また,コントラクターを利用する畜産経営の経営実態についても情報を収集し,コントラクターの存在が,家畜飼養に専念できる等の経済効果につながっていることを明らかにした。